「お前俺を信用してなかったのか?」
「いや、山背がこっちに来るってしったから、保険としてだよ」
「まあ結果誰も怪我無かったからいいじゃん」
「沙耶ちゃんの言う通り、お前も俺がいなかったら危なかったんだから感謝しろ」
「分かったよ」
「感謝はそんな顔でするもんじゃあねえな」
「なんだよ土下座でもしろってか?」
「あんまり怒るなよ、余裕持てって」
「はいはい」
「全く子供だな」
「子供で悪かったな、じゃあそろそろ帰るか」
「おう、それなら家の奴が車出すって言うから駅まで送ってもらえ」
「さんきゅ」
「お前、その年で敬語もろくにできないのか。まあいいや、当主さんにもよろしくな」
「あいつとは会う気はないから自分で言え」
「親との関係は冷え切ってるって訳か」
「うるさい」
あいつの顔を思い出しただけでも反吐がでる
「じゃあ私達は行きますね」
「おう、またな」
「はい、さようなら」
居間を出て玄関に行くと一台の車が止まっていた
「お乗り下さい」
「ありがとうございます」
「いえ、当主様からの命令ですから」
車が出て少し走った所で小鳥遊が一言喋った
「あの?」
「はい?」
「最後におじいちゃんの所に行きたいのですが」
「分かりました」
「安部様はよろしいでしょうか」
「ああ」
「では向かいますね」
俺も少し気になっていたので承諾した
「今のうちに新幹線のチケットとるか」
「私窓際で」
「分かってる」
新幹線のチケットを取って暫く外を見てると昨日遭った怨霊の近くのでかい木に着く
「こちらです」
「じゃあちょっと行ってきます」
「はい、お待ちしております」
ドアを開けて歩くと木の下にお地蔵が置いてあった
「これがおじいちゃん?」
「そうなるな」
「封印ってお地蔵に封印するの?」
「封印は物に納める事が殆どだ」
「そうなんだ」
「まあ昔からお地蔵さんは力が強いから怨霊を氣を納める物として重宝されてる」
「じゃあこれから此処にくればおじいちゃんに会えるのか」
封印されれば既にそこから出る事は数百年とか時間が経って器となる物の力が無くなってしまえば封印は解かれる。封印されれば怨霊として現世に干渉はできないのでこちらから声をかけても伝わる事はできないがそれを言う程いかれてはいないので何かを言う事はしない
「俺はさっきの車で待ってるから」
「何しに来たのよ」
「ただどんな感じか見に来ただけだから」
「そっか」
俺はその場から離れて車に行く
「小鳥遊さまはどうなされたんですか?」
「おじさんと話すって言ってたし俺はそこにいないほうが良いだろ」
「封印されればこちらの声は届かないはずですが」
「こっちの世界のそう言う理屈は一般人には理解できないんだよ」
「そうですか」
「だからあんたも小鳥遊にこの事言うなよ」
「承知いたしました」
この会話が終われば話をする事はなくなる、陰陽師の世界ではいち使用人が俺と世間話をしてくれる人はいない。山背みたいに俺と同じくらいに位の高い人間じゃないと口を聞く事すらしない。そんな陰陽師の世界が俺は嫌いだ、俺は幼い時から実家で良い扱いはされてこなかった理由は安部家が使う式神が使えなかったり強い妖力が使えなかったり霊力も弱い事もあり家では雑用ばかりやらされて家の人間には勿論使用人にすら人として扱われる事はなくそれを見かねて家から離れてた叔父が俺を引き取ったと言う訳になる。そして十五歳になった時に俺は人生を変える出来事が起きる、俺にプロビデンスの目を持った事で俺の生活は一変した。この目は簡単に話せば相手がどんな術を持っているか分かる目だ。使用すると七色に光るので七色の目などと言われるがこの目はいつ誰に発生するか分からないので記録に残っているのは約百年前だった。その為安部の家では俺を家に戻そうと躍起になって交渉してきたが俺は断固として拒否をしたが安部家の当主つまり俺の父親が折れずに話しをして来てどんな条件も飲むと言うので俺が出した条件は第一に妹に陰陽師の世界で生きる事を辞めさせ一切干渉させない事、安部の名前で陰陽師として活動する事を条件に金を全て俺に当てる事、東京に家を用意して実家に帰る事を強制しない事、当主の話はしない事など何個か出した。そして俺は晴れて東京で暮らしているが安部家の家から一人だけ俺に仕えたいとしてついてきた人間がいるそいつは渚と言って元は叔父が当主として働いていた健二と言う執事の息子で俺と年はそんなに変わらずに俺が幼少の頃散々の目に遭っているのを見ていてそんな時に唯一少し雑用を手伝ってくれたりと家での目を気にしつつ俺と仲良くしてくれた事情もあり二十歳を超えて安部家に正式に仕えるタイミングでそれを断り俺についてきてくれた安部家毒に侵されてない唯一の人間と行ってもいい奴だ。
俺はふとした疑問をこの山背の家の人間がどのような答えを出すのか気になった
「あんた山背の人間だよな?」
「はい」
「あの木どう思う?」
「少し霊力がありますが、なんの変哲もない木に見えます」
「そうか」
「違うのですか?」
「俺達にはそうなのかもな」
小鳥遊が帰ってくるのを見ながら七色の目で見ると怨霊の霊力だけじゃなくて怨霊として存在する前に普通の幽霊として存在していた時の小鳥遊の叔母を想う気持ちが木に宿っていた。