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第7話:ディナー

 待ちに待ったディナーの時間であったのだが、少々時間は遡る。


 男性陣は垢を落として、風呂に浸かってひたすら我慢比べなどをして風呂で遊ぶなんて何年ぶりかな? と二人して、ぼーっとした時間を過ごしていたわけであった。


 当然サウナでの我慢比べもやり尽くしたので、上がってきたのであるが普段来ているものと変わりないものが一張羅であるため女性陣のように着替えに時間が取られずに済んだともいえた。


 が、部屋にある唯一の娯楽チェスにはまってしまい、ものの見事にディナーの時間を五分経過させてしまったのであった。


 急ぎ身なりを整えると、チケットをもらってテーブルまで案内してもらった。


「『ゲルハート』、『ウィーゼル』も遅い!」と『セリア』に一喝されてしまったというわけだ。



◆ 俺『ウィーゼル』視点


『セリア』は直ぐに分かった。


「『セリア』の隣は、誰だ? まさか、『ウィオラ』か?」と俺が目をムキ掛けたのは、想像にかたくない。


「まさか、中身がこんなお嬢様で……」あの惨状を見ているだけに、オーガノイドの焼死体を二つ作りと盗賊団自体も一つ壊滅させたあの『ウィオラ』と同一人物なのか?


 と目を疑ってしまったのであった。



◆ 私『ウィオラ』視点


 こればかりは致し方ない、冒険に出ていなければ伯爵ご令嬢なのだからして……。


 私のテーブルマナーは、完璧といえた。


 『セリア』のほうが、少し怪しい所があったくらいで。


「船旅も、そのままで行くのか?」と『ウィーゼル』がようやっと話せた。


「一日目は、このまま行こうかな?」と『セリア』と私が同時に話して、お互いに笑いあった。


「流石に沖に出るとドレスはねー、元に戻すけど」とマタもや二人で被って、笑いあっていた。


 『セリア』がいった。


「二等船室ツイン、二つでいいのよね?」と。


「いいんじゃないか? それくらいはしても」と『ゲルハート』が答えた。


「どうせ、船の上では戦闘バトルは無いだろうしな」と『ウィーゼル』も答えた。


「ヴェルゼニア王都の前の湖で海賊行為が、行われているなんて話は聞かないしな」と『ゲルハート』がいった。


「ラームリツから出て来るにしても、ヤツらは盗賊団であって海賊団では無いからなあ」と『ウィーゼル』も同意した。


「バトルは仮に起こったとしても、何とか出来るだろう。俺らくらいの連中が、ゾロゾロいるとは思えん」と『ゲルハート』が追撃した。


「それに俺らはまだ、『ウィオラ』の真の実力を見ていない」と『ウィーゼル』と『ゲルハート』がダブった。


「この前のは、片鱗は見たような気はするが」と『ウィーゼル』は追加した。


「『ウィオラ』ちゃんの隠されし真の実力かー」と『セリア』もそれに乗じた。


「私の実力ですか? それよりは『セリア』さんの、真の実力もまだ見ていないような気は致しますが?」と逆転させてみた。


「いやいや、私はもう結構手の内は見せちゃってるよ」と『セリア』がまだ余裕を残した口調で反撃に転じた。


アレが使えるなら、魔除けとか作れるのでは?」と聞いてみた。


 それがあると結構、便利なのではある。


 寄ってこれなくなるので、戦闘そのものが発生しなくなるのだと師匠に教わったことがあった。


「確かにアレはまだ見せて無いなー、どっちかというと対抗術式に近いからみせる時になったら自然と見れると思うよ」と『セリア』に返されてしまった。


「今は食事がおいしいので、幸せです」と私は、話題を切り替えにかかった。


「そこは納得、ミドルにしておいて良かったー」と『セリア』はいった。


「飯、何にしても飯に尽きるよなー」とこの話題には『ゲルハート』も噛んできた。

「普段の質素な食事から代わると、ちょっと胃がビックリするけどな」と『ウィーゼル』がいった。


 普段のというのは神殿飯のことを指しているのであろうことはみんな大体想像できていたようであった、ので誰もそこには突っ込まなかった。


「船だと二等と考えて、魚料理でしょうか?」と私がふと疑問に思ったことをそのまま言葉に変換した。


「三等なら、イモが定番なんだけどなー」と『セリア』はいった。

 普段は三等辺りらしい。


「いっそのこと、一等にでもしてみるか? 船だけ」と『ゲルハート』が突っ込んだ。


「言い出しっぺだからな、そこにするならみなの分は俺が持とう」とまで『ゲルハート』がいったのである。


「ホントに? それでいいの?」と前のめりになりそうに、『セリア』がいった。


「本当だ、みなではしゃぐなら一等のほうが心残りが無くて良いだろう?」と『ゲルハート』は本気のようだった。


「この先、船旅は無さそうだからな」と『ゲルハート』が真面目にいった。


「では乗せてもらいますね」と私は宣言した。


「私もー」と『セリア』も宣言に乗った。


「俺もいいのか」と『ウィーゼル』も乗った。


 そして船便は、一等船室ツイン二つに決定したのであった。


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