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第5話:上宿

「じゃあ、あそこの白くて青い屋根の綺麗なところにしますか。」と『セリア』はいった。


「高そうだが、まあいいだろう。どうせ素泊まり、二部屋だからな」と『ウィーゼル』はいった。


「まずは入ったら部屋を見ましょう、これで大体宿が決まるのよ」と『セリア』はいう。


 『ゲルハート』も『ウィーゼル』も同意のようだった。


「宿はねー見た目では決まらないのよ」とさも当然のように、『セリア』が堂々と宿に入って行く。


 私もその後に続いた、因みにサーコートは前で留めてある。


 『ゲルハート』も『ウィーゼル』もその後に続く。


 皆堂々としている、ので私も同じように堂々としてみることにした。



 入って行ったところで、ボーイが立っていた。


「お客様こちらは……」というと『セリア』は、冒険者証を見せランクを示した。


 その瞬間、「失礼いたしました。どうぞ、お通りください」といわせたのであった。


 これが冒険者証の威力か、とも思った瞬間ではあった。


 ランクの重みを、初めて実感した。


 トリプルセブンの成せる技か、とも思った。


 私も堂々としているからなのか、停められなかった。


 後ろ二人も同様に、停められることは無かった。


 そのまま、ラウンジを通り過ぎ、チェックに行くと、「何泊されますか?」と聞かれたがそのままスルーで「部屋を見せて?」と堂々といってのけた。


「こちらが、お部屋になります」といって部屋見本を出してきた。


「気に入ったわ。一泊と思ったけども、二泊くらいまでならしてもいいけど気分次第かしら」というと続けて「ミドルツインを一泊二日で二部屋」と決めてしまったが、素泊まりよりもいいでしょうといった雰囲気で流した。


 部屋の階級は、エンシェント・ハイ・ミドル・ロー・ビッグと五段階に分かれていた。


 ビッグは素泊まりの意味だろうと分かった。


 ミドルは一泊お一人様で十シルズだった。


 これくらいの宿としてはそれくらいは吹っ飛ぶだろうと予想していた額なので。


 特に問題なしの意味で、私はうなづいた。


 二人も特に問題ないといった、飄々ひょうひょうとした態度であった。


 そのためか、お部屋にご案内します、と、サービスが付いた。


 部屋まで案内してもらうとさも当然のように、チップを『セリア』が渡していた。


「お連れ様は、そのお隣の部屋でございます」というと、下がって行った。



 そして部屋に入る前に一旦円陣を組んだ、そして部屋の前で白い袋の中身を二分してその片側を男性陣に渡していた。


 そしてドアを開けると、目の前に湖が飛び込んで来るような感覚のたたずまいの部屋であった。


「ね、ミドルで良かったでしょう? あまり高すぎてもいけないのよ」と『セリア』がいった。


「四階くらいが、ちょうどいいの。値段も手ごろだしね、チップにもそんなに包まなくてもいいし」と『セリア』はいった。


「いくら、包んだのですか?」と正直に聞いてみる。


「十ブロスよ」とあっさり、返答が帰ってきた。


「それとコレ、さっきの分け前、はい」といって紙包みに包まれている、コインを渡された。


「結構入ってるわ。奮発ふんぱつしてくれたのね」というだけあり、比較的ずっしりしているので開けて見ることにした。


「こんなにもらってしまって、いいのでしょうか?」というくらい、入っていたのである。


 二百五十ゴルトが、包まれていたのであった。


 そりゃ重いわ、五十ゴルト金貨五枚分である。


 厚みが、三十五ミリにもなるのだ。


 旅行財布を取り出すとその中に、嵩張らない様にしまうのであった。


「人の命がかかった仕事は、価値があるのよ」と飾らないで、『セリア』がいった。


「そりゃあ、お貴族様の船旅のようには行かないけれども。それなりに頑張っていれば、いい仕事にあり付けるのよ」ともいった。



 現財産額が四百九十一ゴルト九十六シルズとなったわけである。


 旅行財布の中身[1.015kg]

 五十G×九[0.54kg]、十G×四[0.12kg]、一G×二[0.030kg]、

 五十S×一[0.05kg]、十S×三[0.105kg]、五S×二[0.05kg]、一S×六[0.12kg]


 旅行小銭入れの中身[0.00kg]

 五十B×零[0.00kg]、十B×零[0.00kg]、一B×零[0.00kg]、

 五十Ca×零[0.00kg]


  貨幣全重量一.〇一五キログラム、


 体重を除く全備重量が、六十三.六三五キログラムとなったのである。



 何と思ったが、確かに人の命を救う仕事ばかりしていればこうなるものよな。


 という結論に達したのであった。


 しかも今までの約一週間は減るところが無く、増えるところしかなかったのだから自然とそうなるもので、あったということである。


 減ったのは小銭で、増えたのはあまり使わない大金であるのだから。


 しかもパーティーのみんなが、一丸となって取り組んでいるからこその状態だったりもするわけだ。


 ソロ旅をしなくて良かった、とつくづく思うのであった。


「さて今日はベッドだ、久しぶりのフッカフカベッドですね」といいつつ、ボフッとベットの上に転がるのであった。


 もちろん、背嚢リュックメットを外してからである。


 とりあえず、鎧も一旦外すことにした。


「ドレスは一着くらいは、良いの持っておくと便利よ」と『セリア』には言われたが、素材はシルクではあるもののそんなに良い物では無い。


 一応いちおう体裁ていさいを整える程度の、貴族のたしなみ程度のものでしか無いのであった。


 でも着替えない訳にはいかないので、着替える事にしたのである。


 サーコートと同じ繊維でできているドレスが、欲しいといってみることにした。


「そのサーコートしわがよってるのを見たことが無いんだけど、どこで手に入れたの?」と逆に聞かれてしまった。


「特殊繊維のは高いわよー、着心地も良いけど。後は装飾をシンプルにして、地を生かすかだけど。基本は装飾にお金がかかるから、地を生かしたドレスってあまり見ないのよね。生地だけ持って行ってオーダーメイドで一着、いいわねぇ浪漫ろまんがあって」と『セリア』がいった。


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