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第4話:商会からの報酬

「流石に今回は無理を言ってしまった、みんなに謝らねばならない、すまなかった」と『キルヒャ』さんの挨拶あいさつで出立の儀式が行われた。



 因みに、御者の社員さんたちからはもうこんな無理はしないでください。


 問い詰められ冷や汗だくだくの『キルヒャ』さんが居たのはいうまでもなかった。


 そしてこの件と次の街の件は大旦那様から、改めて指示をもらってから動いてくださいといいくるめられていた。



 まぁ、自業自得ですよねー。


 と思いながら、起きようとすると。


「『ウィオラ』は寝ていてくれ、今回は一番消費がデカかったはずだからな」と私も寝ているように『ゲルハート』にいわれてしまうのであった。


「サライまでは休ませてもらいますね」と私はいうと、スヤスヤと眠りについた。


「『セリア』も寝てていいんだぞ、二番目には消費があったはずだからな」と今回は、付いて行っただけの『ウィーゼル』がいった。


「俺らは、精神力を消耗もこれっぽっちもしとらんし」と男性陣二人にいわれてしまったので、『セリア』も寝ておきますかと思い休むことにしたのであった。


 車速は一頭立てに合されるので必然的に落ち、サライに入る頃には夜になっていた。


 まあ、支店があるのでそっちの支店専用の車列停車場に入って止めることになった。


「整備は十分に行えよー、痛んでいるところは即交換だ。馬が二匹も居ないって、どうされたんですか?」と痛い所を突かれ半分精神的には悶絶もんぜつ状態の『キルヒャ』さんが答えた。


「無理をさせたんで亡くなってしまってな、とりあえず支店の馬を貸してくれないか?」と無茶振りをする姿が見られ、「魔導通話機も使わせてもらうぞ支店長」と三階まで上がって行く『キルヒャ』さんの姿が見られた。


「味はあまり保証できないが、暖かい飯を冒険者さんにはお出ししろ急げよコック長! 腕前の見せ所だ!」という結構有利な条件も付いて比較的五号車と九号車はにぎわいを見せていた。


 沈んでいたのは一号車くらいであった。


「しかし、隣街のラームリツが盗賊に占拠されてから交通が途絶とだえてしまってね、結構大変なんだよ」という話し声が、七号車付近で会合を開いているところから聞こえてきてしまっていた。


「しかしなあ、運は付いているようでよかったよここまで辿たどり着けて。後はもう少し国が大勢を立て直してくれれば良いんだが。どうもシグネイチャから派遣されてきた派遣軍がラームリツの攻略に失敗したらしいんだよ。で今は本隊の到着待ちで、ラームリッツァに居るらしいんだ」と支店長のトーンの高い声が響いて来てしまっていた。


「声が通るって、不便なこともあるのね」と『セリア』がいった。


「まあ我々の業界では得なんだがな、そういう状態ではないというところか」と『ウィーゼル』がいった。


「確かに神官様や法士様は、声が通ってナンボよねえ」と『セリア』はいう。


「『ウィオラ』ちゃんの場合は声は声色を使い分けて、ナンボってところでしょうね。それは私も同じなんだけど」と『セリア』はいった。


「『キルヒャ』の旦那、中々降りてこないな、三階に上がってからもう二時間だぜ。俺らも流石にココまでかもな。俺は通過できる道を探すけどもさサラト湖を船でキシリまで斜め横断して、サライ⇒キシリ⇒カイリ⇒ラームリッツァとかな。船旅も悪くは無いぜ、船酔いをするってんならココで待つしかないけどな」と『ゲルハート』が別の案を持ち出してきていた。


「確かに船旅も悪くは無いわね、その場合キシリからラームリッツァに回るんでは無くてサラトに向かって山越えって選択肢もアリよね、少し遠回りにはなるけれども、それでもカルトルには付けられるわよ」とギルド発行の地図を広げながら『セリア』は話していた。


「まあ、俺らがその答えを出すのは少々早いかもな、まずは依頼主様の上長のお言葉が先だろうな、ココで解散することになってもパーティーは解散しないから大丈夫だけどな。先に組んだ予定は行程が変わっても維持するのが冒険者のやり方だからな、それにここまでランクが上がっちまうと組む相手を見つける方が大変なんだ。その点では、このパーティーでは安定して走れるから良いけどもな」と『ゲルハート』が一気に話したのであった。


「支店長からも言ってくださいよ、『キルヒャ』さん無茶しっぱなしなんですよはたから見ててこっちが、ハラハラドキドキもんですよ」と労働条件の交渉が始まっていた。


 すると上から『キルヒャ』さんが降りてきたようだった、流石にこってり絞られたのかグッタリしている。


 そして支店長を呼ぶと金額の交渉をしだした。


 支店長もそれだけ助けてくれたのなら、これくらいは出してもいいだろうとかなりボーナスが乗るような話になって行った。


 そして冒険者御一行様には申し訳ないんだが、この便はココまでになるので各パーティー様にココまでの報酬を渡すので呼ばれたら、パーティーリーダーに出て来てもらいたい」と支店長がいった。


 報酬は本来はラームリッツァで渡される予定だったが、急遽きゅうきょ場所が変わったというお知らせだった。



「一号車パーティーリーダー様」と呼ばれ、『グレイデル』が支店長の前まで行った。


「報酬です、少々少なめですが、大旦那様の指示ですので」といわれ肩を落としていた。



「五号車パーティーリーダー様」と呼ばれ、『セリア』が支店長の前まで堂々と歩いて行った。


「今回はほとんどの窮地きゅうちを救って頂き、大変に感謝しても仕切れないと大旦那様はおしゃっておられます。目減りはしてしまいますがどうぞお納めください」と言って白い袋をもらって、堂々と帰って来ていた。



「九号車パーティーリーダー様」と呼ばれ『デュイーン』が堂々と出ていく。


「本来の金額ですお納めください。こちらで予定を切ってしまいましたので、申しわけないのですが」と言って麻袋をもらって来て、堂々と帰って来ていた。



「ここまでお疲れ様でした」と支店長が言うと。


 御者さんたちも集まってきて「ありがとうございました」と一同が揃って一斉にお辞儀じぎをした。



「ここまででございますので、皆様お荷物の忘れ物などは無いように願います」と支店長が締めくくった。



 一旦各号車に戻って荷物チェック等を行うと、アッサリと引き上げに入った。


 いの一番に出て行ったのは、五号車である私たちのパーティーだけだった。



 他の号車は荷物の片づけに追われているらしかった。


 なので特にパーティーの間の、交流・絡みが全く無かったということもあり。



 港湾施設側の、いい宿を探して歩いて行った。



「湖が見える宿のほうが、雰囲気を味わえていいぞ」と『ゲルハート』はいった。


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