「中々動きませんね? もうそろそろ動き出していてもおかしくないのですが?」と私がいうと、「トラブルかしら?」と『セリア』がいった。
気配を探るべく、糸を
すると違和感が有った、その違和感に従って魔法を発動させる。
エグジスタンス! すると湧き上がるような違和感に襲われる。
これは異界!! おびただしい数の手が、車輪を
「何か、ゾクゾクするわね。寒気がするわ」という『セリア』。
それに対して、私が答えた。
「異界が近い!」みなさんは、馬車から出ないで下さい。
というと私は少し長い構文を唱え始めた、大規模術式に当るので当たるも八卦当たらぬも八卦という奴なのだが、そのままぶちかますことにした。
範囲拡大をコントロールできる最大にまで引き上げた、円陣を組んだ車列が入るくらいである。
「リターンズ・オブ!!」と叫んだ、その瞬間何か空間がきしんだ音がした。
“ギシッ”
“ピキッ”
その直後、何かが空間ごと壊れる音がした。
“カシャンパリンッ”
「よっぽど、この車列を先に進ませたくない。連中がいるみたい、ですね」と私がいって、肩で息をする羽目になった。
「今のは、一瞬で異界に取り込まれる。ところ、だったんです」と私が、恐ろしいことをいった。
「さっきの感覚が、異界の始まりなのか?」と『ゲルハート』が聞いた。
「嫌な感覚ですが、全ての異界がそうではありません。ですが、さっきのはまるでマイナスの境界線に連れていかれたような感覚でした」と私が答えた。
「さっきの術で、異界に入るところは壊しました。それに、車列にくっ付いていた余分な物は、除去したはずなんですが……」とさらに、私が追加した。
「さっきのは、魂魄界にみんなを連れて行こうとした術式だと思います。魂魄界というのは……、違和感がまだありますね。今度は一体だけですけども、とても強い違和感です。まるでアンデッドナイトでも、いるような。少し、様子を見て来ます」と私がいって、いきなり刀のほうを抜いた。
そのまま「マジックソードエクストラクション!」と叫んだ。
「『セリア』さんは、まだ具合が悪いですか?」と私が聞く。
すると『セリア』が答えた。
「えぇ、まだ頭がガンガンするわ」と。
『ウィーゼル』に聞いた「行けそうですか?」と。
「支援がいるなら、行くぞ」といってくれる。
「『ゲルハート』さんは、『セリア』さんの護衛をお願いします」というと幌馬車の後ろから躍り出る。
「ちっと行ってくるから、待ってな」といい残す、と『ウィーゼル』も躍り出る。
躍り出た瞬間、違和感の大元がどこか分かった。
「車列の中心!」というとそちらのほうを向いて構えた、それと同時に『ウィーゼル』も飛び出して来た。
車列の中心に、霧が
風で流れない霧が、そこにあった。
多分、今は現在の風速は五メートルはあるだろう。
それなのに
「アレです。本体は、霧の中でしょう」と私がいった。
『ウィーゼル』がいった「何じゃ、ありゃ? この風の中、流れて行かない霧が有るのか。アレも、異界に存在する霧なのか?」と。
「消耗が大きいですが、やって見ましょう。アトリビュートアサインメントオンホーリー! もういっちょ、これでも喰らえソニック・ブレード!!」と私は術を放った。
“バシィ”
という音を、叩き出すと霧の渦が一瞬で消滅した。
中から重装騎士鎧を
“バシュウゥゥゥゥッ”
とまた、霧が再発する。
「斬るだけではダメか、これなら効くのか、ハジン!!」といって私が、大きく白刃を振るった。
“パキーーーン”
と今度は何かが、壊れる音がする。
今度は、確実に霧が消えた。
だがヤツは、まだ存在している。
車列の中央に、ヤツがいるので例の吹き飛ばす術は使えない。
「シースルー!」と術を叫んだ、「不死属性ですか」と私がいう。
「ならば、これでも喰らえ。ホーリー・フラッシュ!」と『ウィーゼル』が術を掛けた。
“グッ”
と少しひるんだ様子だったが、すぐに戻る。
「仮にアレを倒せても、術士がどこかにいるハズです! そいつを締め上げなければ、また呼ばれるだけです! アレの相手は、引き受けます! 『ウィーゼル』さんはどこか高みの見物をしてる、術士をシバキ挙げてください」と私がいいながら距離を詰めた。
「シールド!!」と術を唱えた。
残り十メートルくらいまで詰めたが、何かあるのか寄ってくる気配がない。
コレはオカシイ、何かあると思いもう一度よく観察する事にした。
馬に乗っているのに、突撃してこない。
それどころか、その場から動こうともしない。
こちらからのチョッカイは確実に効いている筈なのに……よく考えろ私、「要石か! ならばこうだっ」狙うのは対象の足元。
十数発分ぶちかますとして、狙いは足元の多分魔法陣が有るあたりだ。