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第11話:油断ならない相手

 その頃私は一体の強力な敵と、熾烈しれつな戦闘をおこなっていた。 


 低級な魔物のハズだが、油断ゆだんはできなかった。


 黒光りするヌタヌタの鱗を持ち顔のないそれは、何の能力を持っているのかわからなかったのである。


 そのため、お互いに手の内を見せずに戦っていたのである。


 バスタードソードにかけてある術は戦闘継続される以上かかりっぱなしなので問題は無かったが、ハヤテが切れたのである。



 私が動きを止めた、というよりもハヤテが切れたのをさとらせたくなかったからワザと足を止めて呪文合戦じゅもんがっせんに引きずりもうとしたのであった。



 両手持ちだったバスタードソードを、左片手に切り替えていた。


 そしてサーコートの中に右手を入れて、刀をにぎって片手居合かたていあいを準備しながら相手を見据みすえ呪文の詠唱を始めた。


 異界魔法の詠唱えいしょうである、とはいってもこれそのものには私にしか影響が無いものなので問題は無かった。


 術は直ぐに、完成した


「アナザークロウジング!」今度は周囲に影響えいきょうがあるかのように、さけばせてもらう。




◆ 視点は切り替わる『ウィーゼル』視点 


 その頃俺は先頭車に寄って、ちょうど『キルヒャ』の怪我を一瞬で治したところだった。


「怪我が浅くて良かったな」といった時だった、『ウィオラ』の叫ぶ声が聞こえてきた。


「行ってくる、下手に出て来るんじゃねえぞ」とだけいい残し、即ダッシュする。


 『ウィオラ』の前にヒトで無いものが居るようだった、だがゾンビの類ではない。



 『ウィオラ』を支援するべく、ホーリーウェポンをかけた。


 だがバスタードソードの輝きは変わらなかった、あれ? と思っているとかかった感じはあった。


 何かにかかっているのだろう、と思いさらにを進める。


 相手の正体がわかるところまで近付いて、ようやくわかった。


 顔のない魔物だったのだ、しかしドッペルゲンガーほど高位では無いようだった。



 近付いて分かったことだが、『ウィオラ』はもう一本武器を隠し持っているらしかった。


 その隠し持つ武器に、ホーリーウェポンがかかったのだ。


 『ウィオラ』はその魔物との距離を詰めている、最中さいちゅうであるらしかった。


「ブレッシング!」と、自分と『ウィオラ』に術をかける。


 これで少しは戦闘が楽になるはずだ、と思いそいつの裏に出るべく俺は迂回うかいし始めた。




◆ 視点は切り替わる『セリア』視点


 一方その頃、『ウィオラ』と『ウィーゼル』の二人と、別行動となった二人『ゲルハート』と私は「気配でどこまでか分かる?」と『ゲルハート』に聞いたところだった。


 『ゲルハート』が感覚をます、しばし待ったが「近い所しかわからん」との答えだった。



 私は腰の箱から、一枚の札を取り出した。


「オリジナルだから、あまり期待しないでね」、というとアンサーシール! と唱える。


 眼のギョロッとしたふくろうが出て来て、私の手首にまった。


「梟か考えたな」と、『ゲルハート』がいった。


 その梟を、幌馬車から出して飛ばす。


 ある一定の高度まで上った時、「アクティブサーチ!」と呪文を唱え目をつぶった。


 梟に視界しかいを移したのである。


「先頭車のさらに向こう側、の崖の上に居るわ」と私、そのまま呪文を少し唱えるとマジックバレット! といって一撃離脱いちげきりだつの攻撃を敵の魔導士に加えた。


 梟をそのまま高度を上げて術を維持いじして、何をしているのかよく見ることにした。


 ティルファー! とさらにとなえ、遠視えんしを発動した。


 その魔導士はさっきの一撃が痛かったらしくしばらく周囲を見まわしていたが、よく分からなかったらしく再び作業に没頭ぼっとうし始めた。


 梟をいったん退避させ、近場の森の枝にとまらせる。


 そして、自身の目を開いた。


がけの上に召喚陣しょうかんじんを描いて、魔物を呼び出し続けているわ。早くしないと囮役おとりやくで出て行った二人が危ない、もうかなりの数が召喚しょうかんされたはずよ。私たちも行きましょう、そして魔導士を倒さないと」と私はいった。



「こちら側からなら、あの崖へ上っていけるはずよ」と私が動き始めた『ゲルハート』も続く、道案内は私にしかできないのだ。


 こんなことならもっと真面目まじめに、オリエンテーリングの授業をちゃんと受講じゅこうしてればよかったと思うくらいであった。




◆ 視点は戻る私こと『ウィオラ』視点


 その頃、『ウィーゼル』がいった。


「魔物の数が、増えるぞ」一体目の魔物を仕留めた後二刀流となった私ではあるが、もう囲まれていた。


「結構、不味いですが。何匹倒したか、競うとしましょう」と私は余裕よゆういた、フリをしていた。


「囮は損な役回りだな、だが二人が何とかしてくれる!」と『ウィーゼル』はいって、「ホーリーウェポンはいるか?」と続けた。


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