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第4話:本番デビュー

 ここからが旅の本番であった、家の者に見送られ旅立った。


 最初から隊商の護衛をして地道に稼ぎながら行こうと計画したので、まずは冒険者のギルドから南に行く隊商を探していると声をかけたのであった。


 ここエフェメリスのギルドではすでに名の通った私だったからかも知れないが、その当時すでに三ランクの魔法剣士であり、異界術士で闘士でもあったのである。



 そして上客の一人になりかけていたのであった、エフェメリスのギルドマスター『ブライアン・ミルチルダーズ』さんから声をかけられた。


「師匠は元気しているかい?」といわれたのだ。


「あの人は今、フレイニアまで行っているはずですよ。修行の途中にすっぽかされたということは、ここまでおいでと言われるような気がするんです。試験か試練を与えたつもりなのでしょう、頃合いもいいですし」といった。


 すると「ついに冒険者デビューだな、おめでとう!」といってくださった。


「ありがとうございます。南に向かう隊商の護衛か、運送屋の護衛を探しているんですがありますか? デビューついでに、一緒に南下しようと思うのですが」と丁寧に聞くと、「今日はまだだが、も少ししたらグラント商会ってところが南行きの隊商護衛募集を張ると思うよ?」といつも通りにのんびりとした口調で話してくださった。


「いつ頃でしょうか?」と、私が聞いた。


「いつもなら昼過ぎには張ると思うんだが、昼飯をここでしていくかい? 腕によりをかけて作ってもらおう」と、厨房への伝声管に注文がつけられて、


「『ウィオラ』ちゃんが居なくなるのは、少し寂しいが。一人の冒険者が旅立つんだ、コレくらいならしても悪くはあるまい?」といわれたのである。


「ありがとうございます。もうお昼に近いですし、いただいていきます」といって壁柱にある大きな柱時計を見た。


 魔導式で動く小さな時計から、超大型の建物に張り付いている様な大きなものまで様々だが、小さなものは高くて少し手が届かないところはあり、種類はあるが冒険者ギルド等のギルド組織には必ず時計が二つ以上有るのである。



 一つは時間のずれを防ぐため、もう一つは信頼性重視のためだった。


 陽時計やその他の種類の時計もあったが、基本的には魔道シグナルを受信し動くタイプの時計が多かったのだ。


 それもそのはずその魔道シグナルは、ギルドが管理している物であったからではある。


 後は、機械式なのか魔導式なのか手巻き式なのか振り子式なのかくらいの差であった。



 一番コンパクトに済むのが魔導式の時計ではあったが当時かなり高く、小さく携帯に便利であるという事を踏まえても十ゴルトは高かったので買わなかったのである。


 それに、金持ちであることを明かしている様な物であるからであった。


 次に良い物は手巻き式ではあるが、少し大きめの懐中時計といった形で、直径が平均で十五センチメートルくらいあり手巻きし忘れると止まる欠点はあるもののこれが、五ゴルトくらいではあった。


 時を管理できるものは、おおむね高かったといっても良いと思う。


 次は箱型の魔導充電式電池まどうじゅうでんしきでんちという物が入るためそこそこの価格だったがサイズや何から何までが丁度良い手ごろなものであった。


 物としては、縦二十センチ、横二十センチ、奥行き十五センチ程と思い浮かべていただけると助かる。


 その時計の値段としては一ゴルトと安くなるがその分、重量が比較的重く三キログラムとなり置き型で普及はしていた。


 持ち歩くにはかさが大きくて不便であった。


 これは私も誕生日に買ってもらっていたので、どんなものかよく知っていた。


 それを持ってこなかった理由は、旅をするには重いからであった。


 さらに次はもっと大きくなり持ち歩けなくなるサイズにまで拡大されるので、簡単に持ち運ぶことはできなかったが高位のおうちには一家いっかに一台柱時計というくらい普及ふきゅうが進んでいた物であった。


 値段はいくらするのか分からない立派な造りの物から、華奢きゃしゃそうな造りのものまで様々であった。


 基本は振り子式になりほぼ半永久的に動くので神殿などでは重宝されていた様である。


 価格も豪奢ごうしゃなモノで無く質素・簡素しっそ・かんそに済ますのであれば、五十シルズ位まで価格が落ちるためとても良く普及していたものともいえる。


 時計について私が知っていることは、師匠から教えてもらったり父が持っている物を聞いて見たりした知識ではあるがこれくらいのことは知っているわけであった。



 ぬぼーっと、時計をながめながらそんなことを考えていると昼を示す十二時の鐘が鳴り始めた。


 一番よく響くのは神殿設置の金に物をいわせた大時計でありこれで街が回っているといっても良かった逆に貧しいヒトでも昼ドンこと昼鍾ちゅうしょう一二:〇〇と晩ドンこと晩鐘ばんしょう二四:〇〇を知る事が出来たのである。他にも細かい所では〇九:〇〇を告げる鐘が鳴ったり一八:〇〇を告げる鐘が鳴ったりするところもあった様ではあるが、基本的には三時間単位で鐘がなるものであるという事が浸透してきているのではある。



 なので〇:〇〇[鐘は一回]→〇三:〇〇[鐘は二回]→〇六:〇〇[鐘は三回]→〇九:〇〇[鐘は四回]→一二:〇〇[鐘は五回]→一五:〇〇[鐘は六回]→一八:〇〇[鐘は七回]→二一:〇〇[鐘は八回]→二四:〇〇[鐘は一回]に戻るのが何処の都市でも普通でありその様な日常を送って来たということでもあったのである。



 まあかなり昔から続けられてきていることでは有るので、これも都市に住んでいるか大都市に住んでいるかで変わるが、街や村でも時計を備えていることは合ったが結構稀なことではある。


 逆に街や村では範囲が狭いという事もありそこまで大きいかねを必要としないため、鐘撞職人かねつきしょくにんという職業があるくらいであった。


 時間になると鐘を鳴らしに高い所に上がり、鐘を突くという重要な役目でもあったのである。


 時間は柱時計が村長や町長の宅にあるのでそれを見てから鳴らしに行くというだけの簡単なお仕事ではあるが必ず三時間毎にかねを突かねばならないため二交代から三交代制であったとされる記述が多く残っているらしい。



 冒険者ギルドではお昼は二階のギルド宿の飯屋で食べるのが、普通なのである。


 大抵の冒険者ギルドの支部は一階が受付兼酒場兼依頼状を張る所、二階が飯屋でと相場と決まっており、三階には冒険者ギルドの執務室や事務所が詰まっていた。


 それ以上の上階が冒険者ギルド直結という宿屋になっているところが多かったのであった。


 倉庫は倉庫で別棟で建てられており、大抵が一階から三階まで貫通式で大物を預けたり鬼人オーガノイドが専用に泊まる場所にしたりするもので、四階から五階が正式な倉庫になっているのであった。


 木と石造りながら五階までの建物が多かったのであり、冒険者ギルドは街中でもかなり目立ちどこにあるか直ぐにわかる場合が多かったのである。


 後、街中で目立つ建物といえば十階建て位の高さの塔を持つ、魔導士ギルドがあったりするわけだ。



 まあ私も魔導士ギルドにも在籍しているのでギルド証の項目には冒険者ギルドと魔導士ギルドが仲良く並んでいたりするわけではある。


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