それは突然だった、誰かが転移してきたのだ。
転移の兆候は私にはつかめなかったが、師匠が立ち上がったことで分かった。
それくらいの気配察知能力は私にもある。
新たに、誰かの気配がしたからである。
丁度休憩中だったのだ。
師匠が新たに沸いた気配のほうへ向かった。
私は師匠から、静止のサインをいただいたので立ち上がらなかっただけであった。
その場から静かに気配をうかがうことにした。
「冒険者ギルドからの使者です。老師、お願いしたいことがあり参りました」と大きな声で挨拶としたようだった。
お願いしたいことか、何だろう……と思っていると。
「面倒を見て欲しい者が出た、叩けば伸びる!」と大きな声がまた聞こえた。
そして少し時間が経った。
そろそろ立ち上がろうかと思った次の瞬間、二人の気配が消えたのであった。
師匠の気配まで消えたのだ!
思わず気配を絶っただけかと思い、
その場に存在していないことが、改めて分かっただけであった。
二人が立ち会っていたと
その場に書置きと思しき、薄緑色のモノが一枚落ちていた。
それには、「わしゃ南に行く、来たければフレイニアまで来るがよい」と焼き付けられてあるモノであった。
一瞬落胆するのかとも思ったが、“来たければ来るがよい”なんて書置きがあるのだ。
その前に、しなければならないことがあった。
まずは街に戻るのである。