この町には、神レベルのニートがいる。その名も田中マンタロウ、通称マンさん。年齢…永遠の35歳(自称)。朝から晩まで公園を縄張りとし、ベンチを玉座、猫を臣下、子どもたちを観客として君臨する、ニート界のカリスマである。
町の人々は彼のことを「働け」「税金の無駄遣い」と罵る。だが彼らは知らない。このニートこそが、後に町を救う救世主となることを…。さぁ、伝説のニート叙事詩が幕を開ける!
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俺、小学五年生のケンジ! 最近、マンさんの生態を観察するのが趣味だ。あのおっさん、マジでずっと何もしねぇ。公園で寝てるか、鳩と会話してるか、たまに謎の体操してるか。ニートのプロかよ!
ある日、思い切って質問してみた。
「マンさん、職業はニートっすか?」
マンさんは薄笑いを浮かべて答えた。
「わしはニートではない。超越者…そう、スーパーニートなのだ!」
スー…パーニート? 中二病こじらせたおっさんかよ! 笑いをこらえるのに必死だったぜ。でも、よく見るとマンさんの周り、なんかキラキラしてね? ……気のせいか。
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私は小学六年生のユイ。マンさんって、不思議な魅力があるんだよね。ニートだけど、なんかカッコイイっていうか。みんながバカにしても、全然気にしてないし。
ある日、私のリボンが風で木に引っかかっちゃったの。取れなくて困ってたら、マンさんが、
「まかせるのじゃ!」
って立ち上がった。まさか、木に登るの? 無理でしょ、あの体型で。
と思ったら、マンさん、突然、
「必殺! ニート波動砲!」
って叫んで、木に向かって手をかざしたの。……何も起きなかった。やっぱりダメじゃん、と思ったら、急に強い風が吹いて、リボンが落ちてきた! えっ、マジ?
もしかして、本当にニート波動砲が使えるの? あの人、実はすごい人なんじゃ…?
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解説
「ニート波動砲」とは、体内に蓄積された莫大なフォトンエネルギーを掌から指向性を持たせて放出する技である。ニートたちが長年の引きこもり生活で研ぎ澄ました精神力により、体内のエネルギーを高密度に集約、制御することを可能とした。そのエネルギーは、発動者の意思によって衝撃波や熱線、時には幻覚作用を伴う精神干渉波として放出される。一見単なる掌の動きに見えるが、その瞬間、掌周辺の空間は高密度のエネルギー場と化し、周囲の物質や大気に劇的な影響を与える。その威力は、発動者の精神状態やエネルギーの蓄積量によって変動するが、熟練したニートが放つ波動砲は、小型の竜巻を引き起こすほどの破壊力を持つとも言われている。
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フン、愚かな人間どもめ。ワシをニートと呼ぶとは片腹痛いわ! ワシはニートの枠を超越した存在…スーパーニートなのだ! 分かるか? スーパーだぞ、スーパー!
公園で寝ているように見えるだろう? あれは瞑想だ。鳩と会話しているように見えるだろう? あれは異種間コミュニケーションだ。謎の体操をしているように見えるだろう? あれは究極の武術「ニート拳」の鍛錬なのだ!
この町を守っているのは誰だと思っている? ワシだ! ワシこそが、この町の平和を陰で支えるスーパーニートなのだ! ……まぁ、信じてもらえなくてもいいけどな。フン!
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町内マラソン大会の日。俺、ケンジはスタート直後に派手に転んで、顔面から地面にダイブした。全校生徒の前で大恥かいたわ! 泣きながら起き上がろうとしたら、マンさんが、
「ケンジくん、ナイス芸人魂!」
って叫んでた。全然嬉しくねぇ!
一方、私はユイ。トップを独走してたんだけど、ゴール直前で足がもつれて、変なポーズでフィニッシュ! しかも、その瞬間を写真に撮られて、SNSで拡散された…。もう死にたい…。
落ち込んでいたら、マンさんがやってきて、
「ユイちゃん、あれは伝説になる走りじゃ! 今度一緒に『ニート走り』を研究しないか?」
って言ってきた。いや、研究したくないし! ニート走りって何!?
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解説
「ニート走り」とは一見無駄な動きに見えるが、実は体力の消耗を最小限に抑えつつ、長時間の移動を可能にする独自の走法である。その特徴は、脱力した上体と一定のリズムを刻む独特の足運びにある。一歩ごとに地面との反発力を利用し、推進力へと変換することで驚異的なスタミナの持続を実現する。視線は常に遠くを見据え、一定のペースを保つことで精神的な安定をもたらし、長距離移動の苦痛を軽減する効果もある。また、不規則な軌道を描くように走ることで、追跡者を翻弄し、自身の存在感を希薄にする効果も期待できる。これはニートが世間の目を避けながらも長期間にわたり社会生活を維持するための知恵が凝縮された走り方であり、一見怠惰に見える動きの中に、驚くべき生存戦略が隠されているのである。
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ある日、町に大量の珍獣が出現した! カピバラに羽が生えたみたいな生物が空を飛び回り、アルパカにサイの角が生えたみたいな生物が暴れまわってる! どう見ても合成生物! 誰だ、こんなの作ったの!?
避難所で震えていた俺とユイ。その時、マンさんが、
「おぉ、ついに時が来たか…! 封印を解き放つ時が!」
とか言い出して、公園の砂場に向かった。何するんだ、あのおっさん!?
マンさんは、砂場に埋めてあった謎の杖を掘り起こし、天高く掲げた。
「いでよ、ニートフォース! 地球の平和を守るのじゃ!」
って、マジで何言ってんの!? ヤバい、完全にイッちゃってる!
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うむ、ついにワシの力を解放する時が来たようじゃな。ワシが開発した秘密兵器「ニートフォース」を使う日が来るとは! 見よ、この町の人間ども! これがスーパーニートの真の力じゃ!
「ニートフォース」発動!
すると、公園の遊具がガシャーン! と変形し、巨大ロボットになったではないか! いや、待て、ロボットって言うか、ブランコと滑り台が合体しただけじゃね? しかも、動力源は手動のペダル式!? え、まさかワシが漕ぐの!?
ええい、仕方ない! これも町の平和のためじゃ! ワシは必死にペダルを漕ぎ、珍獣軍団に立ち向かう! ブランコアームで攻撃、滑り台シューターで牽制! 意外とやるじゃないか、ニートフォース!
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解説
「ニートフォース」とは、ニートたちの潜在能力を極限まで引き出すために開発された特殊強化外骨格である。一見、公園の遊具を寄せ集めたように見えるが、その内部には高度なニューロリンク技術と生体エネルギー変換システムが組み込まれている。操縦者の脳波を直接読み取り、思考だけで機体を制御することを可能とした画期的なシステムである。さらに、ニート特有の研ぎ澄まされた五感を拡張するセンサー群を搭載し、あらゆる状況下での精密な行動を実現する。最大の特徴は、動力源に操縦者の生体エネルギーを利用する点にある。ニートが長年の引きこもり生活で蓄積した膨大な精神エネルギーを効率的に物理エネルギーへと変換し、驚異的な機動性とパワーを生み出す。その結果、外見からは想像もつかないほどの戦闘力を発揮するのだ。
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マンさんが、まさかのペダル式ロボで珍獣と戦ってる! ありえねぇ! しかも、意外と善戦してるし! ブランコの攻撃が予想外にトリッキーで、珍獣たちは混乱してる!
マンさんの「ニート波動砲!(幻覚)」も炸裂! ……まぁ、何も起きてないんだけど、珍獣たちがビビって逃げ始めた! これって、もしかしてマンさんの勝ち!?
結局、珍獣たちはどこかへ飛び去って行った。町に平和が戻った…。俺、初めてマンさんを尊敬したかも。いや、やっぱりちょっと変だけど。
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珍獣騒動の後、マンさんは一躍町のヒーローになった。いや、町の珍獣になったと言うべきか。子どもたちはマンさんに「ニートフォースごっこ」をせがみ、主婦たちはマンさんに家事を押し付け…いや、お願いするようになった。
俺は、将来はマンさんみたいな自由なニート…じゃなくて、ユニークな発明家になりたいと思うようになった。
ユイは、マンさんの生き様にインスピレーションを受けて、変なポーズの研究を…じゃなくて、自分の個性を活かせる仕事を探し始めた。
マンさんは、相変わらず公園で猫と昼寝をしている。時々、子どもたちにニート波動砲(幻覚)を見せびらかしながら。
「フン、まだまだワシの伝説は始まったばかりじゃ」
この町には、今日もスーパーニートがいる。そして、彼の周りでは、今日も珍事件が巻き起こる。さぁ、次の冒険は何かな?