閃光。
かつて吸血鬼レスタトが策略の成果として催眠で披露され、故に瀕死に追い込まれた目映さ。
1945年7月16日、現地時間5時29分45秒。
この日、人類初の核兵器。原子爆弾ガジェットが炸裂した。
爆発は大地をガラス化させ、深さ十フィート、直径三六〇ヤードものクレーターを刻み、八マイルものキノコ雲を築き上げた。
数秒、一帯の山々は太陽光よりも眩しく照らされ、熱風はベースキャンプすらも真夏より暑くし、彼らへと数十秒後に届いた衝撃波は百マイル離れた地点まで轟いたという。
ロスアラモス研究所所長のロバート・オッペンハイマーは爆発を目撃して、ヒンドゥー教の詩篇『バガヴァッド・ギーター』の一節が心中に浮かんだとされる。
「我は死、世の破壊者なり」
それが、全人類を巻き込んだ今わの際にウィリアム・ガブリエル・リンドバーグが唱える予定だったものとなぜか一緒であったことを知る者はいない。
そしてトリニティ実験責任者のケネス・ベインブリッジは、オッペンハイマーに対して述べたそうだ。
「これでおれたちは、みんな糞ッタレだな」
同年、日本。8月6日には広島市に、8月9日には長崎市に、アメリカによってそれぞれ原子爆弾が投下され、街の大部分が灰塵に帰し、ほとんどが一般市民からなる数十万人もの死傷者をもたらす悲惨な被害をもたらした。
続くソ連の対日参戦などもあって8月15日正午、日本政府はポツダム宣言の受諾と降伏決定を国民に発表。降伏文書に調印した9月2日、アメリカにおいても第二次大戦は終わった。
以後、SMIは影の歴史からも姿を消した。少なくとも、その名は。