碧美安紗奈
現実世界裏社会
2024年11月20日
公開日
2,487文字
連載中
かつてマスコミに殺人会社と呼ばれたマフィア内の暗殺組織〝マーダーインク〟は、構成員であるエイブ・レルズの死と共に崩壊した。
数年後。特異能力と呼ばれる超能力の扱いを巡り、表向きその実在を隠蔽しようとする連合国と、積極的に異能を社会に取り入れようとする枢軸国による第二次世界大戦は、連合国側が優勢となって進んでいく。そんな20世紀半ばのアメリカ。
たいていの組織が、異能の存在しない表の顔〝日向〟と、異能の存在を認める〝影〟との両面を持つ中。マーダーインクは日向を失い、影であるSMI――シャドウ・オブ・マーダーインクだけで存続していた。
処刑委員会委員長であるファニーが事実上の頂点。組織一の実力者であらゆる超能力を一種類だけ発揮できネイティブアメリカン最強のトリックスター〝コヨーテ〟の名を持つデイビッド。それに並びうる実力で幻覚を現実にできる〝女教皇〟の異能を持つヨハンナ。などからなる集団として、彼らは暗躍していたのだ。
そこに、幻覚を生み出せる〝不思議の国〟の異能者であるアリスという新人少女が入ってきたときから、異変は始まる。
【Target.0】
対象/エイブラハム・レルズ
性別/男
年齢/35歳
所属/マーダー・インク
分類/殺し屋
異能/なし
過去のギャングにちなんだ通称、キッド・ツイストの名で呼ばれる。アイスピックの使い手で、それによる数百件もの殺人に関与し、手際のよさから犠牲者の大半が病死と判断されていた。
現在は逮捕され、自身の減刑と引き換えに組織の仲間を次々と売っている。
―Prologue―
Judas, is it with a kiss that you betray the Son of Man
〝ユダ、あなたは接吻によって人の子を裏切るのか〟
(『新約聖書』 ルカによる福音書)