こういうことがあると、日記をつけておいてよかったと思う。もしおれが死んでも、ホラーゲームのアーカイブみたいに生きた形跡は残るだろうから。
それでも情けない泣き言を残して、かゆうま、とかほざくのはごめんだ。しつこいぐらいにこの窮状をどう生きたか書いてやるから覚悟しやがれ!
あとで平和になってから、読み返して恥ずかしくなれることを祈る。
さて、自己紹介から始めようか。
おれは
超イケメンで長身、引き締まった筋肉を内に秘めた……と偽りたいが、こいつを読んでる誰かの後ろのクローゼット辺りからゾンビになったおれが出てきたりしたら言い訳もできんので、ここは正直にいこう。
顔はそんなに悪くないはず。身体測定曰く痩せてるそうだが、運動部なんで筋力もそれなりにあるつもりだ。
あと頭は超いい。これはおれがゾンビになっても外見からは確かめようがないだろう、ざまあw
あ、テストとかも処分せにゃならんか。……その前に腐ってたら、顔も身体も紹介する必要なかったな。
……もういい。
とにかくありのままに、起こったことを話すぜ。
といっても実は謎だ。たぶん、誰にとっても。
だからゾンビになるかも定かじゃないが、こういう異常事態を描いたフィクションじゃ定番だろ?
まあ、そう。今朝起きたら、事件は会議室じゃなくここで起きてたんだ。
今日は彼女なしの野郎どもで〝クリスマスなんざクソ喰らえパーティー〟の予定だったのに、遅刻しちまうところだったんだよ。
まず目覚ましが鳴らなかったんだ、目覚まし。そしたらね。ないんですわ、ベッドの枕元に。
んで、台所でなんか物音がしたのね。
すわっ、野郎の寝込み襲うたぁどんな野獣先輩かと怯えながら見に行ったら、
――数がぜんぜん足りねェ!
……食品の。
つーかね、冷蔵庫開けて食ってる奴らがいたんですわ。使徒を。
じゃなくて食品を。でそいつらがね、いわゆる都市伝説の〝小さいおじさん〟たちなのよ。
……あの、芸能人とかもたまに、「ホントにいたんですよぉ~っ」的に目撃談語ったりする、文字通りちっさいおっさんって言えばわかるかね。
うちにいたのは10センチかそこらの身長で、アイヌ人みたいな衣装着てたんで、もしかしたらコロポックルかもしんない。
ざっと十数人はいたね。
で、そいつらが食料と一緒に目覚ましとか小物とかも盗もうとしてたわけ。
もうね、ブチ切れですよ。――じゃなくて戦慄したね。向こうもね。
おれが来た音でこっち向いたわけだけど、素早いのなんの。
呆然としてる間に逃げられましたわ、ええ。換気扇壊して侵入したらしくて、そこからね。
もちろん、まな板を釘と接着剤でくっつけてそこ塞ぎましたよ。はい。
でもって、証拠に写メでも撮っときゃよかったとか後悔しながら、とりあえずネットにこの驚くべき事態を報告しようとしたさ。
――そこで気づいたね。
テレビもラジオもネットも繋がらない。
スマホやデジタル時計で判別する限り、時計は全部0時で止まってやがる。
朝から出かけるつもりだったんで昨日は早めに寝たんだが、どうも夜中の12時頃になんかあったらしい。地震とかで止まるでしょ、こういうの。
もっとも、身に覚えはない。
こんとき始めて感づいたくらいだったね。なんか外が騒がしいって。
カーテン開けると最初に目についたのは人混みだったよ。みんな外に出てギャーギャー騒いでんの。
ここマンションの三階でそんなに高くないけど、手前に公園あってそこらはよく見渡せるから。
でさ。
窓開けたら、みんな「UFOに拉致られる!」だの「UMAの餌んなる!」だの「幽霊に憑かれる!」だのと喚いてんのね。
しかも実際、それらがうようよしてるようなんだわ。
もう百鬼夜行。
あちこちから煙上がってるし、緊急車両のサイレンとか鳴りっぱなし。
おんなじようなもんが飛び交う空には太陽も月もなくて、朝焼けか夕焼けか不明なミディアムレアみたいな焼きかげんになってたが。
だから正確な時刻も不明。
んで、山ぐらい巨大ななんかがビルの影で蠢いたのを最後に
――おれはなかったことにした。
窓とカーテン閉めて。
なにが起こってんのかさっぱりだ。
確実なのは、これが近所の異変だけじゃ済まないってこと。
いったいどうしたらいいのか。
て書いてたらたった今、いじってたスマホがネットに繋がった。
せっかくだから、ちょっと調べて解明できたことでもあれば書くわ。
おっと日付を忘れるとこだった。
今日は2012年12月23日。
……そうだよ! これ、マヤの予言ってやつなのか!?