「え――」
バンプフ島がどこにあるかを知らぬまま、街を駆け抜け、マカデミア港に到着したラウルは愕然とした表情を浮かべていた。
「いや、だから……バンプフ島行きの船なんかねえって。昔……定期便があったって話は聞いたことがあったけどよぉ。利用者が激減してるのに、あるわけねえって」
出港準備の際にラウルに声を掛けられた船員は、困ったように肩をすくめた。
「では、どうやって……」
「自力でイカダでも造っていくか、泳いでいくっきゃねえんじゃね? 自家用船でもありゃ、別だろうがな」
「船……すみません、肝心のバンプフ島とは、どの辺にある島なんですか?」
「ああ? だいたいの場所も知らずに行くつもりだったってのか? 地図でも見て勉強したほうがいいな……
「ああ……ということは、なるほど、東の方になるわけですね」
アマナ島は割と有名なリゾート島である。
それくらいメジャーな島であれば、ラウルも知っていた。
「鉱石狙いで訪れる連中もいるって話だけど、いろいろと危険な島だからな~。割と命懸けって感じなんじゃねえのか? いっとくけど、そこまでしても一攫千金狙えるほど、美味しいとこじゃないぜ」
「いや……金が目当てというわけじゃなくて……」
「あ~、そしたら、船を持ってる島に行く予定のあるヤツを探して、相乗りでもしていくのが吉なんじゃねえのかい? 都合よく見つかるかどうかわかんねえけど。あ、いけねえ、そろそろ出港の時間だ……」
腕時計を見遣り、船員は入場できないようにゲートにロープを張った。
「あの、あの船、どこへ向かう船ですか?」
「あ~、アマナ島に向かう……おい、ちょっと待て!」
「券を購入した上で、名簿に名前を記載しなければ乗船できないのは知っています。でも、そうすると途中で下船したことが問題になってしまいます。あくまで
「おい、正気か⁉ 確かに泳いで行くってような手段を提案はしたけど……」
「お願いです! 時間がない上、いま思いつくのはこれしか方法がないんです!」
「――って言われてもなあ」
誰かに訝られていないかと、きょろきょろと周囲を見回していた彼は、ラウルによって何かを握らされた。
「――! って」
「お願いします! たいした持ち合わせがないのですが、それで、どにか……」
「……参ったな……」
ほどよく人がおらず、怪しまれているような様子がないことから、船員は嘆息すると
「こっちに来な」と、渡り板へと案内した。
こうして、ラウルはどうにかアマナ島行の船に乗り込むことが叶ったのだった。