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第23話いい夢見ろよ

「心太様!!」

「遅い!!」

そこからは、二人の圧勝だった。

あれだけいた大柄な男達を二人のコンビネーションで、圧倒してすかさず警察が突入して直ぐに日向は捕らえられた。

そして私と霞ちゃんにつけられていた縄をほどいてもらい、楽になった。

「安藤大丈夫か?」

「うん、私は大丈夫だから霞ちゃんを見てあげて」

「分かった」

「日向、もう一度だけ確認させて」

警察官が日向に手錠をかけた時に話しかけた。

「もう君って呼んでくれないんだね」

「当たり前でしょ、私が日向を好きだった気持ちに噓はないけど貴方は?」

「今でも監禁して殺す手前までやって、助けを乞う顔を想像しただけで気持ちが昂るよ」

「この、変態くそ野郎!!」

思わずビンタしてしまった。

そうして、日向倉庫の外に出た時だった。

目の先で、日向が倒れた。

「何?」

「伏せろ!!」

頭を下げられて壁際に連れていかれる。

河上君が、見に行って警察官と話をして戻ってきた。

「何だったの?」

「日向は殺された」

「え?」

「頭を打たれて即死だ」

「誰が?」

「今はいいから救急車に乗れ」

「霞ちゃんは?」

「別の救急車で行くよ」

「分かった」

霞ちゃんの方を見るともう河上君がおんぶされ、救急車に向かって行った。

私も直ぐに救急車に乗った。

私には高坂さんがついてくれた。

そこで、先ほど小耳に挟んだ、気になった事を救急車の中で高坂さんに聞いてみた。

「あの?」

「はい?」

「さっき霞ちゃんに河上君が声をかけた時聞こえちゃったんですけど」

「何を聞かれたのですか?」

「霞ちゃんが、河上君に[上官]って言ったのが聞こえたんですけど」

「それは、霞が紛争に巻き込まれて部隊に拾われた時の上官に心太様の顔が似ていた事が原因でしょう」

「そんな事があったんだ」

「これに関しましては、本人が話せると判断した時にお話になられてください」

「そうですね」

霞ちゃんの過去はとても、暗く深い過去だと察してはいるので此処で高坂さんに追求するつもりはなかった。


もう一台の救急車では霞は朦朧としながら、河上に話しかけていた。

「心太様、申し訳ございません」

「もう良いから、喋るな」

「でも」

「不意打ちだったんだ、仕方ない。それに俺が見つけるのが遅かった。俺こそすまなかった」

「そんな心太様が謝る事では、私不徳の致すところ」

「分かったから、今は体を休めろ」

「はい」


救急車で近くの病院に着き私は軽い治療で済んだが、霞ちゃんは大事を取って一日入院する事になった。

私はジュースを買いに行った高坂さんと分かれて、霞ちゃんの顔を一目見ようと病室の前に行った、そこで河上君と霞ちゃんの話が聞こえた。

「気分どうだ?」

「私は?」

「救急車の中で気を失った所、数分寝ていただけだ。血も止まってるし明日退院できるそうだ」

「そうでしたか」

「まだ、あの夢見ているのか?」

「はい」

「まだ、お前の上官の顔は曇ったままか?」

「はい、夢以外では昨日のことのように思い出せるのですが。夢では戦場で別れたままです」

「そうか、気を失った時も上官って呟いていたくらいだからな」

「やはり、上官は私の事を許してはくれないのでしょうか?」

「それに関しては俺が話せる事はない」

「そうですよね」

「まあ、俺はただ顔が似ているだけだし。でもさ、可愛がっていた後輩に死んで欲しいって思う奴はいないだろ」

「そう言うものでしょうか」

「そう言うものだ」

「霞の話を聞いただけで勝手に想像しただけだし、第一会った事もないんだ。」

「そうですよね」

「まあ、クソガキの戯言って事で聞き流せ、思い出すなとも考えるなとも言わないそれが俺が引き受けた時に話した条件だろ?」

「そうでございましたね」

「よし、今日はもう寝ろ」

「はい」

「霞!!」

「はい?」

「いい夢見ろよ!!」

「はい」

霞ちゃんの姿は見えなかったが少し声が笑っていたので、安心した。

河上君が病室から出てきた所ロビーまで行くの着いていき、椅子に隣同士に座った。

「どこまで聞いていた?」

急に聞いてきたのと声が少し怖かったので、体が縮む思いをした。

「夢の所、なんかごめんなさい」

少し黙って河上君の次の声色はいつもに戻っていた

「盗み聞きとはいい趣味しているな」

「それは本当に悪いと思っているから後で霞ちゃんにも謝る」

「いや、霞には謝らなくていい」

「なんで?」

「話しを聞いた事を忘れろとは言わん、だが今はそっとしといてやれ」

「高坂さんにも同じ事言われた」

「まあ、複雑な過去だからな、本人が話してもいい時に付き合ってやれ」

「分かった、でもさ、一つだけ聞かせて」

「なんだ?」

「上官って霞ちゃんのもしかして想い人?」

「まあ、そうだな」

「そっか、生きているの?」

「分からん、音信不通だ。霞にもそう言っている」

「そうなんだ」

「だが、一枚の写真が霞の生きる希望になっている」

「写真?」

「いつかもっと成長して、その姿を見せに探しに行くんだと」

河上君は一枚の写真を見せてきた。

そこには、誰かの運転で車に乗って何処かに向かう男の人が二人いた。

でも、どっちが霞ちゃんの想い人か直ぐに分かった。

車での移動を撮った写真なのでぶれていたが、助手席に乗っている男の人が河上君にそっくりだった。

「かっこいいね」

「そうだな」


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