ゼロ倉庫に向かいながら耳元に付けたイヤホンで京野さんの指示が出る。
【警備は配置に着いた】
【了解】
【一人で行ってどうするつもりだ?】
【まあ、何とかなるでしょ】
【何とかって、相手は...】
【はいはい、そんなに心配しないで】
京野さんの心配を振り切る。
日向は何をしでかしてくるか分からない。
嫌な予感がするがそれは、サマエルやマラクと対人するに当たって避けて通れないだろう。
一番の懸念は、邪魔が入らない事が一番の懸念だが。
そんな事を考えながら、第ゼロ倉庫の扉を開く。
「やあやあ、来たね」
「日向」
「約束通りって訳じゃないね」
「どういう意味だ」
「警官、いるでしょ?」
「一応、此処には一人だが」
「まあいいや、そろそろ起こすかな」
日向がそう言うと後ろから、暗幕が上がって安藤と霞が椅子に縛られているのが見えた。
だが、口元にはガムテープで縛ってあった。
日向はそれを外した。
「河上君!!」
「心太様!!」
日向は霞の髪の毛を引っ張った。
「おい!!霞は関係ないだろ」
「最初はそのつもりだったけどさ、こいつあんまりにもしつこいんだもん」
霞は苦しそうにグッと唇を噛んだ
「河上君が来たら霞ちゃんは、解放する約束だったじゃない!!」
「そんな約束したっけ?」
「お前本当にくずだな」
「でも、君は僕を最初から目をつけていたでしょ?」
「まあな」
「本当に君は嫌いだったよ、さくらは僕のものだったのに」
「安藤は誰のものでもない」
「五月蠅い!!」
そう言うと大柄な男が数人現れた。
「こいつをやれ」
そう合図をすると大柄の男は僕に向かって走ってきた。
【大丈夫か?】
【はい、合図があるまでは待機で】
京野さんの連絡があったが、数人の大柄の男相手に対応して二人に近づけない状況が続いていた。
「大分辛そうだけど大丈夫かな」
日向は高みの見物と言ったように笑っていた。
「大分、きついな」
「もしきつかったら言ってね、君を縛って拷問して殺すから」
「ねえ、やめてよ。河上君は関係ないでしょ?」
「さくら、まだ気づいてないの?」
「何が?」
「あいつが来てから、さくらは僕を見なかった」
「そんなことないよ」
「そのもったいぶった態度が嫌いだったよ。だから君の大事な河上と隣りの女を殺して最後さくらだ、君の意識がなくなるまで心身ともに殺して僕のものだけにする」
「何よそれ」
大柄の男どもと相対していて、二人に近づけない状態が続いて数分間経った。
「もう諦めてよ、河上!!」
後ろから金属バットで殴られて頭に血が垂れる
「もうやめて!!」
そう、安藤が言った瞬間後ろから銃声がした。
河上君が第ゼロ倉庫に向かう、十分前。
「ん」
「あ、起きた?さくら」
「ねえ、どういう事?」
私は縛られて動けずにいた、隣を見ると傷つけられて気を失っている霞ちゃんがいた
「なんで霞ちゃんに」
「ああ、こいつ?散々暴れたから今は大人しくしてもらっている」
霞ちゃんは頭から血が流れていた。
「なんでこんな酷いことするの?」
「僕はね、サマエルやマラクよりもより高みを目指すんだ」
日向が話している意味が分からなかった。
「最初は君がサマエルやマラクから狙われているって、神鹿狼奈様から御告げがあってねそれでも君を守ればいいと思っていた、でも神鹿狼奈様は守るんじゃなくて壊して独り占めした方が気持ちがいいって教えてくれたんだ」
「気持ち悪いよ、今まで友達でいれたじゃん」
「友達じゃないよ」
「え?」
「僕は最初から、君を壊す為に近づいたんだ」
「噓」
「噓じゃないよ、僕は最初からさくらを壊したかった」
「信じていたのに」
顔が歪み涙が止まらなくなった
「その顔だよ、最高だ」
こいつは最悪の悪魔だ。
十分と少し経って、後ろからの銃声でそっちを向くと高坂さんがいた。