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第12話 新たな分裂

 ドクターFの影響力を改めて知った。

 紺の高いビル、ドクターFの誇らしい。

 バイクを駐車スペースにとめて、スマホを手に入る。

『大きなサービスセンターですね』

 出入り口に近づけば自動ドアが開く。

「いらっしゃいませ。タチバナ様、お待ちしておりました」

 丁重に頭を下げる店員が現れ、今までにない扱いに緊張してしまう。

「ど、ども」

 受付カウンターには店員が複数並んで座っている。カウンターを挟んで向かい合うように座っているのは、この町の住民だろう。

 他のサービスセンターとは違うのは、パソコンのスペースが全て個室だということ。あれだ、ネットカフェみたいな感じ、併用しているのか?

 個室から一人、作業着の男が出てきた。金に染めた短髪で、細身の体格。どこか物憂げな表情のままリュックを肩に提げて足早に外へ。

「本日はどういったサービスをご利用でしょうか?」

「パソコンを借りたい、です」

「かしこまりました」

 別の店員に案内され、今さっき空いた個室に入る。

『なにか、忘れ物ですか?』

 思わずポケットを叩いた。

『私じゃありませんよ』

 少し不満そうに返ってくる。じゃあ誰の声だ、デスクトップ型のパソコンに顔を向けた。

「まさか……あの、何か言った?」

 声をかけてみるが、何も返ってこない。

「やっぱりお前だろ」

 ポケットからスマホを取り、軽く睨んだ。

『ちゃんと黙ってましたよ』

「ウソつくなよ」

『疑うなんて酷いです! それにお前じゃありません。ちゃんと名前で呼んでください』

「はぁ、それ今関係ないって」

『関係大ありです』

「……善処するって言っただろ。で、さっきの声は」

『まだ話は終わっていません』


『あの! こんなところで痴話げんかはやめてください。SCのブラックリストに入れますよ』


 俺達は思わず黙った。スマホじゃない、パソコンから確かに声が聞こえた。人のように流暢に喋っている……――。

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