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第10話 小さな協力者

「そいじゃ、しーちゃんのこと、頼むよー」

 ハリネズミのように尖った髪型をしたドクターFからカードを貰う。

「なんですか、これ『SCプレミアム会員証』って、凄いってこと?」

 9桁の番号とオレの名前が刻まれているほか、バーコードも入ってる。

「そうとも、これさえあれば、なんとなんと、どこのサービスセンターでも有料サービスがタダでしてもらえるのだ! すごかろう?」

「す、凄い!! こんな凄いカード貰っちゃっていいんですか!?」

 充電とかレンタルとか

「いいともいいとも、本来なら年会費3万といったところだが、かなり重要な案件を頼んどるからね、おまけさ」

「年……3万」

 金持ちしか使えないやつじゃん。

 見れば見るほどキラキラ反射して輝いてる。こんなの、落としたらと思うとポケットじゃ心配だ。

 リュックに入れてこう。

『博士、他のしーちゃんもやはり、色んな機械に入っているのでしょうか』

「うむ、ネットに繋がるところならどこにでもな。もしかするとSCのネットに繋げば見つかるかもしれん。あとは、流暢で感情的に喋る子がいたら、間違いなくしーちゃんなのさ」

 ネットなんて世界中繋がってるのに、集められるかどうかも怪しい。

「それって、下手をすれば海外行きにもなるってことですか?」

 ドクターFは優しく笑う。

「安心しなさい、遠くに行くことはない。まぁ、彼女の記憶と感情が全て集まったら、改めて教えるとも」

 結局、得体の知れない奴止まりで、海外に行くことは今のところなし。

「おぉそれとそれと、言った通り私が開発した自慢のバイオオイル電池を積んだから、あの古い電池よか長く走れる。荒い使い方をしなければ1ヵ月充電なしでも問題ないぞ!」

 自慢げに電動バイクの心臓部をポンポン叩く。

 メーターはフル充電されて、液晶部分なんだか新しい。

 会員証もらっていい気分になってたけど、バッテリーまわりまで交換してもらっちゃって、結構な代価だよな……それぐらい、こいつが重要な存在なんだと、思わせる。

「なんか、重くなってきた」

「まぁそんな気負わんでいい、こっちもちゃんと回収に役立つものを開発している、さぁ行っておいで、旅を楽しみながらやってくれたらいいさ」

 その割には、だけど。とりあえずここから近い町を探そう、調べなくてもルートが示されていた。

「あんまり好き勝手にいじるなよ」

『探す手間が省けますよ。余分なことをしてもらっているのですから、できることは手伝います!』

 やる気に溢れてる。

「どうも」

 バイクに跨って、スイッチを押せば静かに始動。

 振動は少ないけどパワーが違う。液晶も光って、文字が見やすい。

 アクセルを少し捻るだけで、車体が羽みたいに加速する。

「す、すげぇ」

 丸いサイドミラーを覗けば、ドクターFがもう遠くにいて、まだ手を振ってくれていた。

『次の町はここから68キロ先です。ノアさん、回収の件、正式に受けて頂きありがとうございます』

「別に、もう片足突っ込でるし……やれることはする。お前が一体なんなのかも気になってきたしな」

『私も、しーちゃんのことを知りたいです。そして、ノアさんが求める安住の地も必ず』

「はいはい、期待してる。海外だったら、楽しみかも」

 山なりの道をどんどん加速して離れ、次の町を目指した――。

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