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しーちゃんと旅する。
空き缶文学
異世界ファンタジー冒険・バトル
2024年11月19日
公開日
25,006文字
連載中
荒廃した世界のなか、電動バイクと共に都市を飛び出した少年ノアは、落ち着ける場所を探していた。
途中で出会った少女(スマホ)は「しーちゃん」と名乗る。
「しーちゃん」はノアが望む場所を提供する代わりに各地に散らばった「しーちゃん」を集めてほしいと依頼する。
不審に思いながらも旅のついでと依頼を受けることにした。
最初は戸惑い、ぎこちなかったが、「しーちゃん」を集めていくうちに友情が芽生えていく。

いつかの話

「……今度は船だってさ」

 人目も気にせず、スマホに話しかけた。

 周りは電波にやられたおかしい奴だと思って、見向きもしない。

 ジャンク品の山が広がるこの国を、懐かしむ日が来るといいけど……。

 黒い海に浮かぶ客船を前に、しゃがみ込み、電動オートバイの充電を待っていた。

『充電が完了しました』

 端末から発せられたAIアナウンスに、コードを引き抜いた。

 充電用コードを巻いてリュックに戻す。

「よし行くか」

 客船のスロープに向かって電動オートバイを押し歩く。

 ふと、立ち止まり、あまりにも短く、濃厚な思い出を残してくれた故郷を目に焼き付けた。

 文字が掠れて見えなくなった道路標識がへし折れ、道路は亀裂にまみれ、でこぼこしている。

 木々が枯れ、丸裸に削られた山々の跡地。

 黒い波がぶつかる岸壁。

 さようなら――。

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