「【
「ニンニン」
「その名で呼ぶのはやめてくださいまし。わたくしの名前はヴィクトリアですわ」
「アッハッハ! お約束でござるなぁ」
お約束とか言わないでくださいまし!
――飛空艇で王都の飛空艇乗り場までに戻って来たわたくしたちは、そこでジュウベエ隊長とコタ副隊長と別れました。
お二人は夕陽を背に仲睦まじく並んで歩きながら、王都の人混みに消えて行きましたわ。
あのお二人も、本当にいいコンビですわね。
――まるでわたくしとラース先生のようですわ。
「にゃああああ、疲れたにゃああああ」
ボニャルくんが猫耳と尻尾をシュンとさせながら、項垂れます。
確かに今回のこの旅も、波乱万丈でしたからね。
二日目の九尾の狐との激戦もさることながら、三日目はほぼ一日トウエイ地方騎士団の方たちとの、タマモ村での現場検証で潰れてしまいましたし、四日目はエドゥに戻って来る途中の山道で『デトックスしないと出られない部屋』に閉じ込められてお肌がツルツルになりましたし、最終日である本日は『帰ってきた全裸パーカーオジサン事件』を解決してトウエイ地方のみなさんから称賛されました――。
……ウム、今思い返しても、まるでフィクションみたいな五日間でしたわ。
――でもその甲斐あって、遂にわたくしたちは『ドッペルフォックスの爪』をゲットいたしましたわ!
これでラース先生の専用装備が、やっと揃う……!
感無量ですわあああああ!!
「ラース先生、早速今から【鉄の甲羅】に行きませんか!?」
「はい、行きましょう!」
「あっ、ズルい! ヴィクトリア隊長が行くなら、私も一緒に行きます!」
「ボクも行ってみたいにゃあ」
「ニャッポリート」
おやおや、みなさん長旅でお疲れでしょうに、元気ですわね。
フフ、そういうことでしたら、延長戦といきましょうか。
「ではこの五人で、【鉄の甲羅】に参りますわ!」
わたくしは右の拳を天高く掲げます。
「「「オー!」」」
「ニャッポリート」
みなさんとニャッポも、わたくし同様右の拳と右の前足を掲げました。
ワクワクですわ!
「ここが鍛冶屋さんかにゃ!?」
「そうですわ」
「ニャッポリート」
【鉄の甲羅】の外観を見て、ボニャルくんが猫耳と尻尾をピンとさせながら、瞳をキラッキラさせておりますわ。
ウフフ、やはり男の子は、こういうのがお好きなのですわね。
「わ、私、緊張してきました……」
「ぼ、僕もです……」
それに対してレベッカさんとラース先生は、まるでこれからゲテモノ料理を食べさせられるかのような、浮かない顔をしておりますわ。
さもありなん。
レベッカさんも愛弓である【
今回はどんな
とはいえ、ここで尻込みしているわけにはまいりません。
わたくしは意を決して、相変わらず立て付けの悪い扉を無理矢理開け、【鉄の甲羅】の店内に入ったのですわ。
するとそこには――。
「ハァ……ハァ……ハァ……、やっぱり槍ちゃんは、このスレンダーな体型が一番の萌えポイントだよねぇ……」
「「「――!!!」」」
例によってホルガーさんがふんどし一丁というエグい格好で、刃がついていない槍に蛇のように絡みついていたのです。
こ、これは……!?
ギリギリアウトでは???
もしこれがフィクションなら、何かしらのコンプライアンスに抵触しそうな絵面ですわ……!!
「あっ、盾ちゃん!? こ、これは違うんだよ盾ちゃん! これは決して、浮気じゃないんだッ!?」
「「「――!?!?」」」
今度は壁に掛けてある盾に向かって、言い訳のようなものを始めましたわ???
これがホントの矛盾ですわぁ~~~~。
こんなアダルティなコンテンツ、
「にゃ????」
案の定ボニャルくんは理解が追いつかないのか、宇宙の真理を無理矢理頭に詰め込まれてしまったかのような顔をしております。
これがホントの宇宙猫ですわぁ~~~~。
「あばばばばばばば」
一方レベッカさんは全身に鳥肌を立てながら、顔面蒼白になって文字通り泡を吹いております。
軽い男性恐怖症のけがあるレベッカさんにとって、この光景はまさに地獄でしょうね。
「……ふむ、これはこれで、小説のネタに使えるかも」
そんな中ラース先生だけは、これを仕事に活かそうとしておりますわぁ~~~~。
流石プロですわぁ~~~~。
「おお! 誰かと思えば【
「ニャッポリート」
「こんにちは」
「お……お久しぶり……です」
「その名で呼ぶのはやめてくださいまし。わたくしの名前はヴィクトリアですわ」
「カカカ。だからそういう様式美はいいって」
だから様式美とか言わないでくださいましッ!
ジュウベエ隊長といいホルガーさんといい、最近わたくしの扱いが雑じゃありませんこと!?
「そっちの猫獣人の坊主は見ねえ顔だな?」
「あっ、ボ、ボクは第三部隊救護班の、ボニャルといいますにゃ!」
ボニャルくんはビシッと敬礼しながら
ウム、どんな
「……ホウ、坊主、お前かなり強いな」
「にゃ?」
「「「――!!」」」
ホルガーさんが一瞬で職人の眼になりました。
ホホウ。
「え、でも、ボク、戦闘は苦手だにゃ」
「カカカ。何も腕力だけが強さじゃねぇさ。時にはたった一つの補助魔法が、戦況をひっくり返すことがあるのも世の常だ。俺にはわかるぜ、お前の中には、まだとんでもない力が眠ってるってな」
「にゃ!? そ、そうなのかにゃ??」
なるほど、ホルガーさんの眼がそう判断したのでしたら、そうなのでしょうね。
この方の人を見る眼だけは、一級品ですから。
……あとはその
「もし何か貴重な素材が手に入ったら、俺のとこに持って来いよ。坊主専用の装備を作ってやるからよ」
「ほ、本当ですかにゃ!?」
マア。
まさか初見でホルガーさんにそこまで言わせるなんて。
ウフフ、これは将来有望ですわ。
「さて、本題だ。俺のとこに来たってことは、
「ええ、その通りですわ」
わたくしは『ドッペルフォックスの爪』を、テーブルの上に置いたのですわ。