「いえ、ヴィクトリア隊長、
「え?」
ラース先生??
仕事、とは??
「ハハ、バレてたか。いやあ、流石著名な作家先生の目は誤魔化せなかったみたいですね」
「「「――!!」」」
パチパチと乾いた拍手をしながら、フリーライターのフリッツさんが瓦礫の陰から現れました。
そういえばこの方をすっかり忘れてましたわ!
この方だけは王都から来た人間ですし、
「さっき九尾の狐が言っていた、
「「「――!?」」」
なっ!?
そ、そういえば、そんなことを言ってましたわね!
「この村の人間は全員
「うんうん、実に慧眼です」
フリッツさんは口角を吊り上げながら、わざとらしく頷きます。
こ、この人は……!
「いやあ、実に残念ですよ。せっかく
あのお方、ですって……!?
「斯くなる上は、あなた方の首を土産にすることにしましょう!」
「「「――!!」」」
フリッツさんは懐から、血のように赤黒い液体が入った小瓶を取り出し、その中身を一思いに飲み込みました。
――あれはッ!?
「――う、ぐ、グアアアアアアアアアアアアア!!!!」
フリッツさんの身体が見る見るうちに肥大化していき、頭から禍々しい2本の角が生え、背中からは巨大なコウモリの羽のようなものが生えてきました。
そして両手の爪は、猛禽類のように鋭く尖ったのです。
まるで悪魔のような風貌になってしまいました――。
なるほど、この男は、【魔神の涙】を流している組織の人間だったのですわね……!?
『あのお方』というのは、組織のボスに違いありませんわ。
――遂に。
遂に組織の尻尾を掴んだかもしれませんわ!
「ハハハハハ!! ドうでスこの力は!! 実に素晴らしイでしょウ!?」
し、しかもこの男、まだ人間としての意識がある!?
【魔神の涙】は、日々改良されているようですわね……!
これはいよいよ、本格的に看過できない事態になってきましたわ――。
くっ、マズいですわ。
おそらくこの男にも、あの異常な再生能力があるはず。
魔力が切れてしまった今のわたくしでは、この男を倒すことは……。
「――
「「「――!!!」」」
「…………え?」
その時でした。
ジュウベエ隊長の【
えーーー!?!?!?
「そ……そんな……、バカ……な……」
フリッツは白目を剥いて、ピクリとも動かなくなりましたわ。
何という呆気ない幕切れ……。
これで何度目かわかりませんが、ジュウベエ隊長がいて、マジで助かりましたわ。
それにしても、異常な再生能力を持つ【魔神の涙】服用者も、首を切れば再生はできないということがわかりましたわね。
これは思わぬ収穫ですわ!
「アッハッハ! 九尾の狐戦では大して役に立っていなかったでござるから、これで少しは格好ついたでござるかな?」
「いえいえ、九尾の狐戦でも大活躍でしたわ、ジュウベエ隊長。ありがとう存じますわ」
「ニャッポリート」
特にどんな苦境に立たされても、決して微動だにしないその鋼のメンタルは、わたくしも見習うところがございますわ。
「ニンニン、殿、お疲れ様でございます。こちらはお酒です、ニンニン」
「おお! かたじけないでござる!」
どこからともなくコタ副隊長が取り出したお酒を、実に美味しそうにがぶ飲みするジュウベエ隊長。
……わたくしもお酒を飲めば、ジュウベエ隊長みたいな鋼のメンタルになれるのでしょうか?
ま、まあ、とはいえ、これで念願の『ドッペルフォックスの爪』を手に入れましたわ!