「おや? おやおやおやおや、わっちを殺す? それは不可能というものでありんす。何故なら自らの
「「「――!」」」
九尾の狐の右腕が肥大化し、爪が鋭く伸びました。
そしてその爪で地面に、『ヴィクトリア・ザイフリート』と『ジュウベエ・ヤギリ』という名前を書いたのですわ。
ま、まさか――!!
書かれた名前が見る見るうちに人の形になり、それはわたくしとジュウベエ隊長の姿になりました――。
異なるのは、左頬にある
……くっ!
「ぬしら二人は、この中でも特に強いでありんすからなぁ。わっちの
確かにこの
「そんなッ! 私にはヴィクトリア隊長と戦うことなんて、絶対できません……!」
レベッカさん!?
「ぼ、僕もです……! いくら偽物とはいえ、ヴィクトリア隊長をこの手にかけるなんて……!」
ラース先生まで??
いや、そんなことを言っている場合ではないですわよ!?
「アッハッハ! 結構結構! まさか自分自身と戦えるとは、この上ない鍛錬になりそうでござる!」
と思ったら、
こういう時は、
「おやおやおやおや、元気なお人たちでありんすなぁ。わっちも王都の人間を喰うのは初めてでありんす。これでぬしらの肉が美味かった暁には、ツテも出来たし、次は王都で暮らすのも悪くないでありんすなぁ」
ツテ、ですって……!?
「――
「――
「「「――!!!」」」
その時でした。
ジュウベエ隊長とジュウベエ隊長の
【
そのあまりの速さは、わたくしの目でも追うのはギリッギリなレベルですわ。
【
これはなかなかの、スプラッターな光景ですわぁ……。
「アッハッハ! マジで拙者と同等の力を持っているではござらんか! これは斬り甲斐があるでござるッ!」
うん、ジュウベエ隊長の
「月夜に流れる悪魔の調べ
十六の奏者が天使を嗤う」
「「「――!!!」」」
その時でした。
わたくしの
これは――!!
「みなさん、離れてくださいませッ!」
「は、はい!」
「はいぃぃ!!」
「はいだにゃあああ!!」
「ニャッポリート」
わたくしも【
「月夜に流れる悪魔の調べ
十六の奏者が天使を嗤う」
まさかこれを誰かと撃ち合う日がくるとは――。
「太陽は月の夢を見て
月は太陽を夢に見る」
「太陽は月の夢を見て
月は太陽を夢に見る」
「――絶技【
「――絶技【
「「「――!?!?」」」
お互いの【
「くぅ!?」
「うわぁ!?」
「にゃああああ!?」
「ニャッポリート」
その衝撃で、神社を含めた辺り一帯の家屋は、大型台風に見舞われたみたいに全壊してしまいました。
嗚呼、また環境を破壊してしまいましたわ……。
どうかタマモ村のみなさん、お許しくださいませ……。
「おや? おやおやおやおや、これはこれは、思った以上にとんでもないお人たちでありんすなぁ。こんなに無敵の
九尾の狐はころころと笑います。
確かに、これは非常にマズい状況ですわ。
このままわたくしたちが倒されることがあったら、このジュウベエ隊長とわたくしの
それは最早、意志を持った天災と言っても過言ではありませんわ……!
何としてでも、九尾の狐はここで倒さねば……!
「さて、ついでにそっちの連中の
「「「――!!」」」
九尾の狐は地面にラース先生とレベッカさんとボニャルくんの名前も書き、三人の
嗚呼、そんな――!!
「くっ。――【
ラース先生が詠唱すると、【
ウム、【
「――【
当然のようにラース先生の
嗚呼、こんな時に何ですが、ラース先生の
――ハッ!?
いけないいけない!
わたくしとしたことが!
今は戦闘に集中ですわ!
「う、うおおおおお!!」
「あああああああ!!」
「にゃあああああ!!」
「ニャッポリート」
こうしてわたくしたちは各々の
「アッハッハ! 楽しいでござるなぁ!」
あれからどれほどの時間が経ったでしょうか――。
一瞬のようにも、数時間経っているようにも感じます……。
実際は数分なのかもしれませんが、常に全神経を集中して動き続けているので、時間の感覚がないですわ。
――わたくしたちは依然、自らの
できればわたくしが他の方々の
「月夜に流れる悪魔の調べ
十六の奏者が天使を嗤う」
――!?
またですわ――!!
「月夜に流れる悪魔の調べ
十六の奏者が天使を嗤う」
もうこれで、何度目の【
「太陽は月の夢を見て
月は太陽を夢に見る」
「太陽は月の夢を見て
月は太陽を夢に見る」
「――絶技【
「――絶技【
またしても【
最早タマモ村の面影は、ほとんど残ってはおりません。
流石のわたくしも、そろそろ魔力が残り僅かですわ。
「おやおやおやおや、これはこれは、そろそろ幕引きのようでありんすなぁ」
九尾の狐がころころと笑います。
不幸中の幸いなのが、九尾の狐本体は戦闘に参加していないことですわ。
おそらくわたくしたちの
そういう意味では、ある意味チャンスでもありますわ。
九尾の狐本体さえ倒せれば、この
……問題はどうやって
「アッハッハ! 大丈夫でござるよ【
「――!」
ジュウベエ隊長……!?
「ニンニン、その通りです、ニンニン」
「「「――!!?」」」
「なぁっ!?」
その時でした。
いつの間にか九尾の狐の背後に立っていたコタ副隊長が、クナイという忍が使うナイフのようなもので、九尾の狐の頸動脈を掻き切ったのです――。
ふおおおおおおお!?!?
そういえばコタ副隊長のことを、存在自体すっかり忘れておりましたわ!
……流石気配を消すことのプロフェッショナル。
誰にも気付かれずに、ずっと陰に潜んでこの機会を窺っていたのですわね!
「ぐ、貴様……! ぐああああああああああ!!!」
「「「――!!」」」
九尾の狐の断末魔の叫びと共に、わたくしたちの
フゥ、これで我々の勝ちですわね。
「……ま、まだでありんす……! 本番は、ここからでありんすううううううう……!!」
「「「――!?」」」
その時でした。
九尾の狐の全身が白い毛で覆われたかと思うと、見る見るうちに身体が巨大化していき、神社ほどの大きさのある、四足歩行の白い九尾の狐の姿に変容したのですわ――!
こ、これが、九尾の狐の真の姿……!?