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第28話 そして聖夜は持ってきた②

 さて、何を買ったらいいのだろうか。みんながどんなものを選ぶか予想できないし、ダブるのは避けたい。安牌なのはハンカチや文房具類。これじゃ少し面白くないから、アウトドアショップに向かう。


「これいいな。」


少し店内を見回したあと、俺は1つを手に取った。


〇〇〇〇〇


私はスポーツ用品店のニット帽の前で立ち止まる。


「久志ならこの色。楓ときいはこれか。音羽はこれで、奏っちはこれ。」


誰でも似合いそうな色が見当たらない。


「いや、でも、これなら。」


〇〇〇〇〇


「さ〜て、何にしようかなぁ〜。私が解散って言ったけど、買ったことないんだよなぁ。」


私は本館の3階にある文房具屋に来ている。とても静かな店で、雰囲気もいい。


「書きやすいボールペン?シャーペンもありだけど、買うなら少し高いのを買っちゃおう!」


私は箱を1つ、手に取った。


〇〇〇〇〇


「私なら、何貰ったら嬉しいかな?」


プラプラと雑貨店を歩く。私と同族のQはさっさと行っちゃったし、周りには見知った顔が見えない。1人でインテリアのコーナーを少し歩く。


「これ、いいね。これなら喜びそう。」


私は1つ手に取った。


〇〇〇〇〇


冬かぁ、冬だなぁ、これなら今の季節にピッタリか。


〇〇〇〇〇


私なんてプレゼント交換なんかしたことないよぉ。


「そうだ、みんなで見た映画のノベライズ版なら!」


みんな、喜んでくれるかな?


〇〇〇〇〇


「よぉし、みんないいもの買ったかぁ?」

『うおお〜!』


本館にあるフードコートに集合した俺たちはハンバーガーを買った。1番残りのギガが多い奏のスマホにくじ引きアプリをインストールして、それぞれの名前を入力する。これで引いたくじの名前の人からもらうってシステムだ。


「じゃあ、私から引いていい?」


きいが手を挙げて立ち上がる。奏がスマホを渡すと、縦にスワイプしてくじを引いた。


「音羽のだ!」

「はい、どうぞ。」

「ありがと〜!開けていい?」

「きい、全員で開けるから待っとけ。」


きいは少し不服そうにプレゼントを机に置き、ハンバーガーをかじる。


 そのあとも同じようにくじを引いていき、熊野さんが海南さんのを、奏がきいのを、海南さんが奏のを、俺と桜は交換で受け取ることになった。


「それじゃ、開けるよ!」

『せーの!』


〇〇〇〇〇


私が貰ったのはスノードーム。中にサンタとトナカイが入っていて、雪が舞っている。とても綺麗だ。


「ありがとう、音羽。」

「喜んでいただけて何より。」


私はスノードームを大事に袋に戻した。


〇〇〇〇〇


「奏、結構センスあるやん。誰にもあげたことないくせに。」


私が貰ったのは入浴剤の詰め合わせ。実用的で、冷え症の私には少しありがたい。明日の晩から使ってみよう。


〇〇〇〇〇


「これってもしかして…」


袋の中から出てきたのは1冊の本。


「まさかこれって。」

「そう、ワンピの映画のノベライズ版。これならみんな喜ぶかなって。」

「ありがとな、きい。」


〇〇〇〇〇


「これは、なかなかの代物ですな。」

「結構高かったんだから、大事に使ってよ。」

「分かってるって。」


楓からのプレゼントって聞いて、どんな爆弾が入っているのか怖かったけど、案外普通のものだった。箱入りのボールペンなんて使ったことないや。大事にしよ。


〇〇〇〇〇


「久志、これって。」

「ニット帽。見た感じこれが1番暖かそうだなって。まさか、」

「開けてみて。」


俺は袋を開ける。そこにあったのは黒のニット帽だった。


「被ったね。」

「被ったな。」


ハハッと笑い合う。これだけ色んなものがあるのに、まさか被るとはな。ちょっとびっくりだ。


「なんだ、お前ら被ったのか。」

「ホントだ、ひい君たち被ってる!」

「どんな確率だよ、それ。」


そしてみんな、俺たちのことを見て、


『似合ってるから何も言えねぇけどよ。』


と言う。少し恥ずかしいけど、嬉しい。本当にいいプレゼントを貰ったな。


 帰りも樟葉から特急に乗り、枚方市で乗り換える。


「今から、Qの家に行ってクリパか。」

「料理は杏ちゃんが作ってくれるみたい。杏ちゃん料理上手だから本当に楽しみ!」

「そして、お泊まり会して、明日の朝帰ると。」

「まだ、半日も経ってないんだな。」

「楽しいね!」


やがて見慣れた景色になり、俺たちは斜めに傾いた電車から降りた。

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