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第21話 俺たちの1学期中間③

「で、ここの範囲は1≦x≦5になるから…。」


午前中は英語、午後からは数学を教えあっている。俺は根っからの理系だから数学は出来るが英語は苦手だ。さっきまで教えられていた奏に教えるのはなんか楽しい。


「おい、なんで笑ってんだ?」

「奏に教えるのが楽しくて。」

「お前奴だな。」

「だろ。」


俺ははにかんでみせる。一方女子グループは…


「「わーかーんーなーいー!ねぇこの問題やって♡」」


海南さんときいが寝転んで駄々をこねている。


「「やりなさい!」」

「「ケチ。」」


それを桜と熊野さんが見ている感じだ。2人とも全教科得意という超高スペック。勉強が嫌いなきい達はどんどん詰め込んでいかれる情報に、頭がパンクしそうになっていた。俺も奏もそんな様子を見ているわけで、


「よし、今の問題終わったら休憩にしよう!」


気づけば助け舟を出していた。


「「よっしゃぁ!!」」


急激に2人の問題を解くペースが上がる。さっきまで悩んでいた問題も、2、3分経てば解けていた。海南さんがゲームのコントローラーを握る。その横にきいが座り、「何をしようか」と相談を始める。


「仲良いね、あの2人。」

「そうだね。」


楽しそうな背中を眺めながらお菓子をつまむ。30分ほどしてキリが着いたので、また勉強会を始めるのだった。


 その次の週も勉強会をした。その時には海南さんもきいも、勉強が楽しくなってきたのか、1度もゲームをすることなく、ただひたすら机に向かっていた。


 テスト本番前。5分前になって問題が配布されると喋ってはいけないことになっているので、教室は沈黙に包まれる…こともなく、ただ聞こえるか聞こえないかの音量で、海南さんの呪文が響いていた。


「ヤマ当たりますように、ヤマ当たりますように。」


どうやらヤマを貼ったらしい。チャイムと共に紙のすれる音とシャーペンが削れる音が鳴り始め、テストが始まった。海南さんはヤマが当たったらしく、ガッツポーズを決めている。比較的勉強の出来る俺たち(海南さん以外)は、詰まることなく上の問題から順に解いていく。最初は歴史、次はコミュ英。明日からは、論表、数1、化学基礎、公共、生物基礎、現国、数A、古文と続く。計5日間の日程。しっかり対策も済ませているので全教科ある程度は解けた。


 最終日。


「終わった〜!」


海南さんが大きく伸びをしながら叫ぶ。


「自信は?」

「にゃい!」


やれやれと言いたげな顔をする桜。きいも同じような反応をするだろうから何も聞かないでおくことにした。


「補習頑張れよ。」

「奏っち酷くない?」

「事実だろ。」

「そうかもしれないけど。」

「絶対そうだ。」


んんんんーーーーっと声にならない声を出して、ポコポコと奏の胸を叩く。


「そんなことより次は球技大会だね!」


きいがポニーテールを揺らしながら言った。

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