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第17話 俺の幼馴染

「どうも。橋本紀乃です。ひい君とは幼稚園からの付き合いで、小学校の頃には勉強を教えてくれてたんですよ。」

「それなのに忘れてたんだ。」


海南さんは新しいおもちゃを見つけたように笑っている。


「しょーがねぇだろ。中学校はバラバラだし、なんかガリ勉みたいになってるし。」

「うわ〜ん(笑)。楓ちゃ〜ん。ひい君酷すぎるぅ(爆笑)!」

「よぉ〜しよしよしよし(笑)。私が守ってやるからな(爆笑)。」


昔からそうだった。きいはコミュ力はめちゃくちゃ高かった。それは今でも健在で、ガリ勉風の見た目だからあまり話しかけられることもなく、ずっとウズウズしていたのだろう。


「お前の変わりようをみんなに見せてやろうぜ。卒アルぐらいあるだろ。」

「やったー!ひい君家久しぶりだ!」


きいが喜んでる横で桜が視線を送ってくる。


「(いいの?バレるけど。)」

「(どうせ今日話すべきだろ。)」

「(そういやみんな家に呼ぶんだったね。作詩のコツの特別講義とか。)」

「(そうそう。)」

「(じゃあ、しょうがないか。)」


目で会話を交わして、弁当の残りを食べる。途中、俺の黒歴史を話そうとしたきいの口を塞ぎながら食べていたので、いつもより10分ほど長くかかった。チャイムがなるときいは「装着!」と丸眼鏡をかけて自分の席に戻っていった。


 放課後になった。俺は先に自転車を飛ばして最寄駅で待っていた。熊野さん以外はこの駅を使っているので、ピッピッピピッピッピッと改札の音がうっすら聞こえてきた。


「待ったか?」

「今来たとこ。」

「定型ぶほぉ。」


海南さんが馬鹿にしたように噴き出す。


「行くぞ。」


俺先導で歩き始め、裏道を抜け住宅街を歩く。2、3分したら俺の家が見えてきた。桜とアイコンタクトをとる。


「「ここが「俺」「私」達の家です。」」

「「「「はぁ?」」」」


 玄関で杏ときいが抱き合っている中、俺たちはソファに腰掛けていた。


「で、どういうことかな?」

「すまん言葉が足りなかった。」


それから俺たちは今まであったことを事細かに話した。


「まとめると、桜のアパートが燃えて、行くところがなくなったからQの家にお世話になっていると。」

「そんなラブコメ展開あるか〜!」

「楓、あっちゃたのよ。ここに。」

「くそ〜。」


海南さんが分かりやすく悔しがる。


「ねえねえ、話終わった?じゃあ卒アル探しに行こ!」


きいが杏を抱き抱えて戻ってきた。


「じゃあ持ってくるわー。」

「みんなで行こーよ。」

「場所は分かってるから。」

「ケチ。」


部屋に入り、アルバムを取り出す。人差し指でつーっと縁をなぞって持って降りた。


「あった?」

「あったぞ。」


ソファでゴロゴロしているきいに背を向けるように座り、個人写真の6−2のページを開く。


「Qって昔、こんな感じだったんだ。」

「同一人物とは思えない…。」


今はコンタクトに変え、髪も少し長くした。今となってはあの頃が懐かしい。


「これが紀乃なの?」

「何ともアホっぽい顔。」

「IQ3を擬人化したような顔ね。」

「うるさい。」


女子3人の口撃にそう答えるきい。男子2人は何か言ったら殺されそうなので何も言えなかった。


「ああもう恥ずい。ひい君の黒歴史喋っちゃお!」

「やめ―」

「させるかよ。」


俺は加太くんに抑えられ、洗いざらい話された。

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