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第15話 俺の初回授業②

 「気をつけ、礼、着席。」


チャイムと同時に日直の号令が響く。いかにも学校って感じだが、俺はこのシステムには懐疑的だ。こんなことをするくらいなら自習の時間を増やしてほしい。


「え〜、この3年間音楽の授業を担当します。磯浦仁です。よろしくお願いします。僕の授業は必要なのは教科書とやる気だけです。授業はプリントで進めるので、気になる人はファイルでも作ってください。今日は初回ということで授業はしません。」


所々から歓喜の声が聞こえてくる。


「なので1つ、お遊びというのもなんですが、軽く親交を深めるために、課題をやってもらおうと思います。」


そう言って先生はホワイトボードに大きな文字でこう書いた。


『作詞作曲をしてみよう。』


教室全体が「え〜」や「マジ?」で埋め尽くされる。中には現実から目を背けているのか、机に伏す人もいた。


「仲のいい人と2、3人のペアになってもらって、一曲書いてもらいます。テーマは『入学』か『桜』。どちらかをモチーフにして書いてください。さて広がった広がった。」


号令がかかると、いくつかのグループに分かれ始めた。でも結局、俺はいつものメンバーの二歩ほど後ろ。ここが一番気持ちいい。


「「だるっ。」」


海南さんと加太くんがハモった。まあそうだろう。俺だって第一印象は「は?」なんだから。


「いいよね〜ピアノできる桜と音羽は。」

「私は音羽に比べたら全然だし。」

「そんなこと言ってる楓もある程度は引けるでしょ。」


そう言って笑っている女子達を遠目に見ながら、加太くんの方に近寄る。


「(何このハイスペックな女子達)」

「(俺たち完全に足手まとい)」

「(そうだな)」


俺たちはただ眺めていた。それしかできなかった。


「でも、作詞がなぁ。」

「作詞ならQができるよ。」


まあまあ大きな声だった。クラスの全員の視線が突き刺さる。桜は「ごめん」と手を合わせた。


「由良君、歌詞書けるの?」

「教えて。」


たちまち俺の席からは平穏がなくなった。


「分かった、分かったから離れろ、暑い。」


一向に離してくれなそうだ。


「昼休み、教えてやるよ。」


そう言うと離れていって自分達の輪の中に入った。代わりに桜が近寄ってくる。


「ごめん。」

「別にいいよ、だけどあとで会議な。」

「あ〜、やっぱ怒ってる。」


桜は俺の脇腹を突いてくる。


「でも、教えれるの?」

「さあな。」


でも、一つだけ分かっていることがある。



嫌だ。

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