「何だこの作文(?)は?」
俺は、職員室に呼び出されている。そして今、目の前にいるのは担任のシオちゃん。じゃなくて黒潮岬先生だ。身長は148㎝。もううちのクラス(C組)のマスコットと化している。
「何を微笑ましい目で見ているんだ。」
「いえ、そんな目では見ていません。」
「はぁ、まあいい。で、これに対しての釈明はあるか?」
「僕はただ、高校生活というものを俯瞰で見てみた結果を書き連ねただけです。」
「よし、じゃあ不可だな。」
「それだけはやめてください。」
俺が慌てて止めようとすると、その手を掴んで原稿用紙を握らされた。
「書き直そうか。」
「…はい。」
俺は肩を落として教室に帰った。
席についても何を書いたらいいのか分からない。とりあえず、前の席で自習している熊野さんに声をかけた。
「熊野さん、こないだの作文再提出だったんだけど、どうしたらいい?」
「ん〜、ちょっと読ませて。てか、桜に頼めばよかったじゃん。」
「桜はあそこだし…あっ。」
僕は慌てて口を塞ぐ。そんな俺を熊野さんはあらあらと言いたげな目で見た。
「こりゃすぐボロが出そうだね。」
「気をつけます。」
「あと、こりゃ手遅れだ。」
熊野さんが原稿用紙を指差しながら言う。
「テーマが腐ってる、中身が腐ってる、ゆえに全部腐ってる。」
「殴るぞ。」
「じょーだんじょーだん。可能性がないとは言ってない。終わりよければ全てよしだ。」
熊野さんは原稿用紙を叩きつけてきた。
「何となく分かった。ありがとう。」
「おう。」
俺はペンを手に取り、続きを書く。
―……
僕はこの期間がなんたるかを知らない。だからこの高校生活で春が何か。それを見つける高校生活にしたいと思う。―
「これでいいかな?」
「いいんじゃね。」
始業10分前、俺はまた職員室に歩き始めた。シオちゃんを呼び原稿用紙を出す。
「ふふっ。期待してるぞ。」
シオちゃんからはそれだけだった。
教室に戻って席に座る。桜が不思議そうな目で見ている。
「何してたの?」
「再提出。」
「そ。」
ぎこちない会話をした。