「お前ら、今日の放課後は空いているか?」
今は、講堂から帰ってきて、グループワークの真っ最中。加太くんは急に話を持ち出してきた。
「親に確認したらいけるだろう。」
「右同。」
「俺も杏に訊いたらいけるな。」
一応ノリに乗って答えると、全員がこっちを向いた。
「嘘でしょ。まさかQがこのノリに乗ってくるなんて…。」
海南さんは天を仰ぐ。加太くんは顎が外れそうなほど口を大きく開けている。熊野さんは右手で両目を押さえて、凛々しく上を向いている。有田さんは必死に涙を拭いていた。
「悪かったな、お前らぶん殴んぞ。」
「ごめんね、悪気はなかったんだ。」
有田さんが涙を流しながら言う。説得力0だ。
「あと『Q』って何だ?俺のあだ名か?」
「いや、そうだけど…ってこれの元ネタ知らないの?」
海南さんが机をバンバン叩いて言ってくる。加太くんは『知っているよな、知っていると言え』と目で訴えてくる。
「いや、知らんが。」
「マジか。私の敬愛する朝○カフカ先生の文○トってラノベ?漫画?アニメがあるんだけど、そこに夢野久作ってキャラがいて…。」
海南さんが身振り手振りを使って力説してくる。
「始まったぞ、長えんだよな。Q、お前が招いた事態だ。止めてくれ。」
呆れた顔をした加太くんが指示してきた。
「んで…。」
「海南さん、貸してくれた時にまた読むから。」
「本当?」
「本当。」
「やったぁ!」
海南さんはいとも簡単に止まり、にへぇとしている。すると加太くんが肩を叩いてきた。
「よくやった。これからも頼むぞ。」
俺は精一杯嫌な顔を作る。結局断れなかった。
「で、どこ行く?」
海南さんは有田さんと戯れ合いながら話を振る。
「まずは肉だな。」
「肉ぅぅぅぅ〜!!」
海南さんが叫んだところでチャイムが鳴った。担任の終礼が始まる。全員が帰っていく中で、俺たちは集まって店探し。決まったところで海南さんが右手を突き上げる。
「いざ行かん、焼き肉の地へ〜!」
「「「「うおおぉぉォォ〜!」」」」
○○○○○
一方杏サイド。
「あっ、バカから連絡だ。」
「あーちょっと嬉しそー。」
「誰が嬉しいかよ、真奈。」
正直嬉しい気もしないことはないけど…。
「で、内容は?」
『友達と飯食って帰る』
「うわっ、雨降りそう。」