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第11話



「え? 母上って?」

背後を振り返ると、そこには金色の髪を持つ美しい少年が佇んでいた。

あ…アレクシス。


どうしてここに息子が!? たしか、彼は勉強中だったはずなのに…。


カイルは慌てて身を正し、アレクシスに深々と頭を下げた。

「アレクシス様、失礼いたしました。」

その声には、少しばかりの緊張が感じられる。

カイルがどれほどこの若き公爵の息子を尊敬しているか、私にも伝わってきた。


「母上、僕もご一緒してもいいですか?」


「…アレクシス? あなたはこの時間、授業では…」


「母上が窓から見えたので、走ってきちゃいました」


それって授業をさぼったってこと?

うーん、私怒られないかなぁ…


カイルも何かを察したのか、私の顔を見つめる。

その視線に気づいて、少し焦る。


「あ、あの、アレクシス? ちゃんと授業は…?」


アレクシスはにっこりと笑い、まるで何事もなかったかのように無邪気に答えた。


「ああ、母上が窓から見えたので、つい走ってきちゃいました」


「…そ、そう…」


全く答えになってないわ。カイルも何かを察したのか、じーっと私を見ている。



ここ最近思うんだけど、アレクシスってこんなキャラだったっけ…?

確か、攻略キャラの中でもどこか影のある毒舌キャラだったはずだけど、

今の彼はどこか無邪気で素直な笑顔を見せている。



まだ幼少期だから、少しは違うのだろうか…?

でも、私が転生に気づくまではこんなに素直な感じではなく、

いつも毒舌を吐いていたような気がするのに…。


「母上、僕のとっておきの場所に連れて行ってあげるよ」


アレクシスが、少し得意げに下から覗き込むように言った。


なんだろう…相手はまだたったの5歳で、無邪気に言っているだけのはずなのに…。


『どうしてか、まるで口説かれているような感覚になるのは…』


アレクシスが再び、ニヤリと笑って

「ほら、母上!僕の手を取って」と、今度はさらに可愛らしい笑顔で手を差し伸べてきた。


私は思わず言われるがままに、その小さな手を素直に握った。


すると、アレクシスの小さな手が、私の手をしっかりと包み込むように握り返してきた…

と思ったら、まさかの恋人つなぎ?!


「え、これって…」


私は思わず自分の手を見る。

彼の小さな指が、私の指に絡む様子に目を見開く。

いやいや、ちょっと待って!


ちらりと彼を見ると、一瞬だけニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべたかと思うと、

すぐに無邪気な笑顔へと変わった。


う…うん?


アレクシスはまだ5歳だし、この意味はわかっていないはずよね?

まあ、親子だし…?

きっと私が恋愛経験ゼロのオタクだから、

自意識過剰になってるだけ…だよね?


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