うん…これはどうしたものだろうか。
私は今、境地に立たされている。
「はじめまして、ソフィア様。私はカイル・ローレンスと申します!」
目の前に現れたのは、赤髪がまぶしいほどに輝き、キラキラとした目を真剣に光らせている、熱血のイケメン騎士だった。
その姿はまさに「騎士」と呼ぶにふさわしい。鋼のような決意を感じるけれど…正直、少し気圧されてしまう。
「…護衛騎士なんて、頼んでもいないのに」思わずため息が漏れる。
ため息のひとつもつきたくなる。だって、この騎士が現れたせいで、私の脱走計画が危うくなっているのだから。私にとって、これほどの大問題はないわ!
カイル・ローレンス。
その名は確かに聞いたことがある。名門家の出身で、騎士団でもその腕前が高く評価されているという、まさに理想の騎士。しかし、その勢いがちょっと…私には強すぎる。
「ソフィア様をお守りするため、命を懸けて戦う覚悟です!」
そう熱っぽく語る彼の言葉に、私はどう返事をしていいのか分からない。
まさに直球すぎて、少し目をそらしてしまいたくなるような…そんな気分だ。
「そんなに大げさに言わなくても…」
つい、そう呟いてしまう私だった。
でも、彼の目はそれを超えて真剣だ。その真剣さに、私はまた少しだけ気後れしてしまうのだった。
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私は、すぐさま私の専属護衛騎士と言い張るカイルを強引に引き払って、夫であるエドガーの書斎へと向かった。
その途中、後ろからカイルの困惑した声が聞こえてくる。
「ソフィア様、どうかお待ちを!私の任務を全うするために、しばらくおそばに…」
けれど、私はその言葉を無視して、歩みを速める。
書斎の扉を勢いよく開けると、夫エドガーが机に向かって書類を整理している姿が目に入った。
「エドガー様…!!」
その呼びかけに、エドガーは顔を上げると、「どうした、ソフィア。何かあったのか?」
エドガーは、私の顔色をすぐに見て、心配そうに立ち上がった。
「あ、あの騎士が…突然やってきて…わたしどうしたらいいか!」
私は少し言葉を詰まらせながらも、カイルのことを伝えようとする。
けれど、エドガーは私の話を半分も聞かず、すぐに私を自分の腕の中に引き寄せた。
「ソフィア、落ち着け。」
な…に、今、私に何がおきているの?!
(落ち着けって、言われても…)
言葉が出ない。頭の中はすっかり真っ白。
エドガーの腕の中に閉じ込められるように抱き寄せられ、あまりにも近すぎて…
ああ、どうしよう、顔が熱い…!
絶対に、今、顔が赤くなってる気がする。どうしよう、何か言わないと!
「でも、あのカイルていう騎士が…」
私が言いかけると、エドガーは少し困った顔をしながら、優しく私の髪を撫でる。
「カイルのことか?俺が毎日お前のことを見てやれないから護衛をつけたんだ。」
「わ…私は!必要ないわ、そんなの」
エドガーの動きが一瞬、ぴたりと止まった。
「護衛騎士をつけたら…俺に会えなくなると思ったからそんなに必死なのか?」
は?!
見上げると、エドガーが愛おしそうにこちらを見つめている。
「大丈夫だ、毎日お前には会いに行くから。ただ、俺が仕事で見れない間だけだ。だから、お前は何も心配しなくていい。俺はお前のずっとそばにいる」
?!?!?!
あ、あの…?
ど、どういうことですか?
推しの様子がなんだかおかしいんですが…
これ、まさか何かの罠なんでしょうか?