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第94話 ルイス王子から第一王女への書簡


 まずは多忙につき、手紙でのやりとりになりますこと、お詫び申し上げます。


 でもこの手紙はいちばん信頼のおける部下にあずけましたから、構いませんよね? 読んだあとは焼き払うなり、あなたのご自慢のにしまいこむなり、お好きになさってください。


 さて、とりあえずご報告したいのは、我らが愛しい妹姫、フィオナについてのことです。

 あのおとなしくて、ボクらの後ろをついて回るばっかりだったフィオナは、魔法兵器開発局で思いのほか楽しく過ごしているようです。

 あなたの懸念けねんするとおり、少々考えの甘いところはありますが、顧問にすえたクレノ・ユースタスという技術中尉が、これがなかなか小賢しい男でして、思いのほか役に立ってくれそうです。


 それでなのですが、ボクはボクに課せられたフィオナの教育係というお役目を、一時中断しようと思っています。


 というのも、ボクは魔法兵器開発局に、というより先に書いたクレノ技術中尉に興味を持ちました。

 彼に研究中の通信魔法を与えてみたのですが、おもしろいところと通信していましたよ。あれは、いったいどこだったのかな。通信相手は見たことのない服装をしていました。これは勘ですが、ヨルアサでもなければシンダーナでも、シソーでもない。

 もうどこかしらからお聞き及びのことと思いますが、その結果として、神々は小神殿を崩壊させるにいたりました。あの激しい天罰の下り方からすると、ボクらの想像もつかない場所ではないか……そんな気がします。


 それで、彼が次の閲兵式で見せてくれるという「未来」とやらがどんなものなのか、のんびり見物してみたいような気分になったのです。


 これに関しては決定事項なので、文句は受けつけません。

 あしからず。


 ルイス・リンデン・ヨルアサより、

 敬愛いたしますヨルアサ第一王女、

 ソフィア・ライラック・ヨルアサへ。

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