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第13話 フィオナ姫の日記


 きょうは、たいへんゆういぎかつ記念すべき一日でした。


 魔法兵器開発をほんかくてきにすすめるため、クレノ・ユースタスという技術少尉にあいにいったのです。

 かねてからこの魔法使いのうわさはカレンから耳にしていました。

 ユースタス技術少尉はカレンたちの代の魔法使いのなかでも、とくべつ魔法にすぐれ、てさきがきようで、かわりものとしてしられていたようです。しかしながら、どうもやしんにあふれる性格だったらしく、魔法学校を卒業したあとはさまざまな魔法研究所のしょうへいをけりとばし、地方軍に入ってしまったとのこと。

 そのへんの性格は、しょうじきどうかなあと不安に思っていましたが、ユースタス技術少尉がさくせいした魔法兵器の資料や報告書をとりよせてみたところ、その魔法兵器はかなりどくそうてきで、このましくおもえました。


 どうせ魔法兵器を開発するなら、わたしはありきたりな兵器などつくりたくはない。だれもがあっというようなものをみてみたいのです。


 しかしながら、報告書というものはだれしもほんしんをかかぬもの……とはいつか父王様がおっしゃっていたとおりです。とくにわたしたち王族が読むころには、どんな報告であれ、おためごかしがまざり、歯にきぬきせぬどころか、あたりさわりのない言葉で歯を何じゅうにもくるみ、まるでみえなくなってしまうしまつ。

 ユースタス技術少尉のことも、じっさいに行ってみるまでは話はんぶんにしたほうがよいとこころえておりました。

 けれども、かれのすむ小屋に行って、それはまちがいだということにすぐ気がつきました。


 なんとユースタス技術少尉は、マンドラゴラを品種改良し、マンドラゴラでマンドラゴラをさいばいするというかっきてきな畑を作成していたのです!


 それで、彼はほんものなのだとかくしんしました。

 これはすごい兵器です、すばらしい魔法です、とか言うだけ言って、手をうごかさぬそのへんの魔法使いとはちがいます。

 かれはどこにいてなにをしていても創意工夫をやめぬ男です。

 ユースタス技術少尉は、もう魔法兵器を開発したくないとかぬかしていましたが、いつか彼も考えなおすひがくるでしょう。あたらしいものをその手でつくりたくなってたまらなくなるはずです。だって、わたしがそうなのですから。


 本日付で、ユースタス技術少尉を技術中尉に昇進させ、魔法兵器開発局顧問および実験部隊顧問としました。


 これからあたらしく彼が何をつくるのか、とても楽しみです。


 それから、マンドラゴラはわたしの部屋に引き取りました。

 みんなげんきにそだってます。


 きのせいかもしれませんが、いっぴきたりないようなきがします。


 フィオナ・エーデルワイス・ヨルアサ

 王国歴435年紋白蝶の月1日




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