「...んっ...ふ...あ...」
私、なんで今日会ったばかりの人と、こんなに濃厚なキスをしてるんだろう。
鼓動の音だけが耳に響いて、何も考えられなくなる。
「んっ...れ、んさん..」
名前を呼ぼうとしたけれど、彼の舌が私の中に深く入り込んできて、言葉は熱に溶かされてしまった。
初めてのキスがディープキスだなんて...
あり得ないよね。
でも、それがれんさんだから不思議と嫌じゃない。むしろ、初めての相手が彼でよかったなんて思ってしまう自分がいる。
彼の手が私の背中をそっと包み込み、身体中の力が抜けていく。触れるたびに伝わる温もりに、胸の奥がキュッと痛くなる。
「....っ、れんさん、こんなの...」
そんな抗議の言葉もまた、彼の甘い熱に飲み込まれた。
ーまさかこんな少女漫画みたいなことが自分の身に起こるなんて。
頭の片隅でそう思いながら、私はただ、彼に溶かされていく自分を感じていた。
こんな展開になったのも、
「ご飯の後にカラオケでも行こうか」というれんさんの提案に、軽い気持ちで頷いてしまったからだ。
私は一人カラオケをするほど歌うのが好きだから、純粋に楽しもうと思っていた。だけど、もしかすると、れんさんにとっては「個室」という場所が別の意味を持っていたのかもしれない。
部屋に入ってすぐ、私がつけた電気を彼が急に暗くした。
「え?なんで暗くするの?」
そう尋ねると、れんさんは表情を変えずに「暗い方が雰囲気が出るでしょ」と軽く言った。でも、その声の低さにどこか大人っぽい響きを感じて、心臓が少しだけ早くなるのを自覚した。
ソファの端に座り、少し距離を取るようにしていた私だったけれど、れんさんはじわりじわりと距離を詰めてくる。
2曲目を歌い終わる頃には、すぐ隣にいる彼の存在感が大きすぎて、歌に集中なんてできなかった。そして、ジュースに手を伸ばしたその瞬間——
「近い…!」
れんさんの顔が急に近づいてきたのだ。
あ、これってキスされる——
そう思った瞬間、反射的に顔をそらした。
「嫌なの?」
耳元に触れるようなその声と、私の顔を軽く自分の方へ向けようとする指先に、胸がドキドキして仕方がなかった。
「嫌じゃないけど…でも、ちょっと早いよ…」
自分でも情けないくらい震えた声でそう答えると、れんさんは優しく笑いながら言った。
「じゃあ、いいじゃん。」
その言葉に、抵抗する気持ちはすっかり消えてしまった。だって、私好みのイケメンにこんな風に迫られたら、断るなんて無理だ。
「…そっか、いいかも」
その瞳が私を射抜いた瞬間、彼の唇がそっと私に重なった。
ふわりと始まると思いきや、次の瞬間には貪るような熱烈なキスが襲ってきて、思わず体をのけぞらせた。
彼の大きな手が私の後頭部をしっかりと押さえ、逃げる隙すら与えない。
その舌が深く、もっと深くと求めてくるたびに、心臓が激しく跳ねる音が耳の奥で響く。
ーーだめ、頭が真っ白になっちゃう。
息継ぎすら許されない、激しすぎるキスに溺れてしまいそうで一ーでも、不思議と嫌じゃない。
むしろ、もっとこの感情に浸りたくなってしまう自分が怖い。
何も考えたくなかった。ただ彼を受け入れて、この瞬間だけを感じていたい。
「明日は仕事だけど…まあ、今日は少しくらい遅くなってもいいか。」
そんなことを考えながら、私は彼の熱に身を委ねていった。