「れんさん、綺麗だね」
「…そうだね。」
私たちはれんさんおすすめのスポットで夜景を見ながらベンチに座っていた。
周囲は静かで、ひと気があまりなく、たまに見かけるカップルたちの笑い声が微かに響くだけ。とにかく、ロマンチックな雰囲気が漂っている場所だった。
れんさんは相変わらず無愛想だが、手はずっと繋いだまま。だから、少なくとも私のことは嫌いではないし、もしかして…少し早いかもしれないけど告白されるのかな?そんな期待が頭をよぎる。
でも、れんさんからそんな言葉は一切なく、ただ黙って夜景を見つめるだけだった。
れんさんは私が話しかけると、ちゃんと答えてくれるけれど、基本的には無言の時間が多い。だけど、私はそれが心地よかった。人に気を使いすぎて疲れてしまう私にとって、無言でも気にせず余裕を見せてくれるれんさんがなんだかとても魅力的だった。
れんさんが私の好みのイケメンであることは間違いなく、でも、それだけではなかった。マッチングアプリで唯一、会ってみようと思えた理由は、彼が私が羨ましいと思うものをすべて持っているからだった。
自分の軸をしっかり持ち、周りの目を気にせず自然体でいる姿が、まるで生きるのが楽そうだと感じさせてくれる。
そんな内面も外面も私好みなれんさん。彼を知れば知るほど、ますます惹かれていった。
「行こうか。」
しばらく夜景を見つめていた後、れんさんが静かに立ち上がった。
もうこれでデートは終わりなのかな、そう思うと少し寂しくなったけれど、その時、れんさんがポツリと「お腹空いてる?」と聞いてきた。
その一言に、胸がドキッと高鳴った。
まだ、この素敵な時間が続くのだと思うと、嬉しさと共にどこかホッとした気持ちが広がった。
心の中で「れんさんとの時間がずっと続けばいいのに」と思いながら、私は小さく頷いたのだった。