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マッチングアプリで運命の出会い?



マッチングアプリで最初に目にしたRさんのプロフィール写真は、後ろ姿だけど、なんだかイケメン風だった。正直、心の中でちょっとドキッとした。でも、すぐに「騙されてはいけない!」と自分に言い聞かせた。


写真は加工されているかもしれないし、むしろ本当にイケメンだったら、わざわざマッチングアプリなんて使うわけがない。出会いに困ってるはずがないんだから。そうだ、きっとこれは何かのトリックだ。私は一瞬で心を冷静に戻し、もしイケメンが現れたら、確実に遊び目的だろうと決めつけることにした。


だって、今までの人生で出会えなかったのに、アプリで簡単に自分好みのイケメンが見つかるなんてあり得ない。そんな夢みたいなこと、私の人生に起こるはずがない。恋愛に期待して痛い目を見た過去が何度もある私は、これまでの経験を総動員して、「90パーセント、冴えない男性が来るに違いない」と思い込むことにした。


待ち合わせ時間が近づくにつれて、私はどんどん緊張してきた。心臓がバクバクして、手汗がにじむ。これはまずい…。このままだとイケメン風のRさんが現れたら、失礼な態度を取ってしまうかもしれない。それだけは避けなければ!そう思った私は、むしろ太ったおじさんが来る可能性を想像し、最悪のシナリオを頭の中で描き始めた。


「そうだ、むしろ彼が太ったおじさんだったらどうしよう。でも、どんな人が来ても笑顔で迎えなきゃ…!最悪、彼が全身ジャージ姿で現れても笑顔で対応しよう!」


そんなことを考えながら待ち合わせ場所に向かうと、自然と笑いがこみ上げてきて、少しだけ緊張がほぐれた気がした。「大丈夫、大丈夫。どんな人が来ても、きっとなんとかなる…はず!」と自分に言い聞かせ、私は意を決して待ち合わせ場所へと歩みを進めた。


どこだろう…キョロキョロと辺りを見回していると、ふと、ひとりの身長の高い、すらっとした男性と目が合った。彼の反応は薄かったが、無言でこちらに近づいてきた。


あ、これがRさんだな、と直感で分かった。


「…紗菜さなさん?」

「は、はい」


マスクをしているので顔は見えないけれど、背格好からしてイケメンの予感がプンプンする。


しかも彼は、私よりも年上なだけあって、落ち着いた雰囲気をまとい、クールな印象だ。それでいて、ちょっと気の抜けたラフさもあり、絶妙にバランスが取れている。少女漫画では、いつも脱力系のクールキャラに心を奪われる私にとっては、初対面から好印象すぎて心の中で拍手を送りたいレベルだ。


…だけど待てよ。もしこの人が本当にイケメンだとしたら、私が遊ばれる確率が一気に跳ね上がるじゃないか!そう考えたら、急に不安が押し寄せてきた。そこで、私は一つの決断を下した。「彼のマスクの下は、きっとめちゃめちゃ微妙に違いない!」そう信じることにしたのだ。


だって、職場で「マスク詐欺」として有名になった営業職の上司を思い出してみてほしい。彼が飲み会でマスクを外した瞬間の衝撃ったら!その時の素顔の写真が派遣のアルバイトにまで回って、笑いのネタにされたっけ…。うん、Rさんもそうに違いない。彼も実際にはそんな感じに違いないと、心の中で思い込むことで、私はなんとか緊張を和らげようとした。


でも、その努力も虚しく、ほんの数分の会話でRさんがまさに私のタイプの性格をしていることに気づき、緊張が一層高まるばかりだった。


しかも、どうやら彼も私に対して熱い視線を送ってきている気がする。あれ、なんだか距離もどんどん詰めてきてるような…。


「これで顔までイケメンだったら…もう確実に遊びに違いない!」と、心の中で絶望感が増していく。どうしよう、これ以上近づいてこないで…いや、でも近づいてほしい…でも遊ばれたくない!心の中の葛藤はもうぐちゃぐちゃだ。


頭の中では「彼がマスクを外した瞬間にギャグ漫画みたいなオチが来る」と勝手に思い込んで、なんとか平静を保とうと必死だった。


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