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第13話 開廷、『魔法少女裁判』

「葦原生徒、物巾部ものきべ生徒。嬉河会長代理がお呼びです。準備がすみましたら、連行いたします」

 黒い腕章をかけた女子生徒が二人、唯依ゆのりとすざくにそう告げる。

 すざくは青ざめながら、そっと唯依ゆのりのすそをつかむ。唯依ゆのりはただ頷き、すざくをうながした。

 ゆっくりと寮の階段を行く四人。普段は通ることのない通路を過ぎて、見知らぬ風景の扉の前へとたどり着く。

「こちらです」

 そう言いながら言葉だけは丁寧な女子学生が扉を開く。

 重々しい音ともに、光が溢れ二人を包み込む。

「ようこそ、『魔法少女裁判』へ」

 韻を踏んだ聞き覚えのある女性の声。

 唯依ゆのりを前に、二人はゆっくりと部屋の中に足を踏み入れる。

 広い部屋――天井も高く、奥行きもある。

 いままでの学校生活でこのような部屋があるのは、初めて知ったすざくであった。

「ここは『ヴィヴォンヌ集会所』。本校の華族の子女でも、ごく限られた方しか入ることを許されませんのよ」

「それは、光栄だ」

 天井に視線をなげかけながら、唯依ゆのりはそうつぶやく。

 無言で頷く壇上の少女。

 普段の制服とは異なる、まるでドレスのような衣装をまとうヴィヴォンヌ集会会長代理――嬉河季代うれかわとしよの姿がそこにはあった。

 その周りには黒い礼服を着た少女たちが居並ぶ。

 目の前には小さな椅子のない長机が置かれていた。

『魔法少女裁判』、これはまさしく『裁判』であった。

「華族の子女、それもそれ相応の家格の子女のみが入学できるこの聖アリギエーリ高等女学校に魔法少女が紛れ込むとは言語道断ですわ」

 ドレスをなびかせながら、ゆっくりと段を下る季代としよ

「もっとも、魔法少女の出現は今回は初めてではありませんこと。本校のみならず、われわれ支配階層の子女に何度も魔法少女化したものがいたのは歴史の事実。彼女らはその禍々しい魔法の力を使い、秩序ある社会を破壊しようとしてきた」

 扇子の先をそっと唯依ゆのりとすざくのほうに向ける季代としよ。その表情は今までになく、硬いものであった。

「わが嬉河家は戦国の御代より、その魔法少女を探し裁く命を受けた一族。このような場であなた方に会いたいすることを嬉しく感じますわ」

「あ、あの!」

 それまで黙っていたすざくが声を腹の底から押し出すように、そう遮る。

 突然の邪魔に不満そうな顔する季代としよ。それに怯みながらも、すざくは続ける。

「こ......こんな勝手なことが許されるわけが......裁判ていうのは国の偉い判事様だけができるもので......こんな学校の中で裁判とか......」

 ふん、と季代としよははなを鳴らす。

「話がわからない方ね。あなたも魔法少女かと思いましたが、どうやら違うようですね。それでも同室者と言うだけで大罪に値しますが。いいですか、これは『魔法少女裁判』なのです。これは公法と同じ効力を持つのですよ。昔より魔法少女を排除するために、幕府の御代でも行われてきた由緒正しいものなのです。あなたのような――魔法少女を死刑に処するために!!」

 扇子の先が再び唯依ゆのりのほうをビシッと、指し示す。

 唯依ゆのりは顔色を変えない。

 そして今、『魔法少女裁判』が始まろうとしていた――

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