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第12話 二人の誓い

「葦原......さん!?」

 突然の唯依ゆのりの行為におどろくすざく。唯依ゆのりはすざくのまえにひざまづき、そっと右手を握りながら、見上げる。

「あなたは僕のことを信じてくれた。そして友人と呼んでくれた。それによって契約は結ばれる。契約はなされた。我が君、物巾部ものきべすざくさま。汝にこの――」

「ちょっと、ま、待って!」

 真っ赤になり、あわあわするすざく。あまりの展開に頭がパニック状態になる。

「契約......ってあの、その......」

「魔法少女の契約。魔法少女は自らを信頼し、そして友人とみなした存在に対して絶対の忠誠を誓う。その瞬間にその契約対象は『主君』としての存在となるんだよ」

《なるんだよ......って......?!》

 さらに不可解な言葉に、唖然とするすざく。

「主君って、封建時代じゃあるまいし......」

 そんなすざくのすがたをじっと凝視する、唯依ゆのり。そしてくすっと笑みを漏らす。

「いきなりすぎたかな。まあ、おいおいわかってくれればいい。さしあたっては――」

 右手を扉にかざしそうつぶやく唯依ゆのり。そうすると、右手の手のひらの上に青い光が浮かび上がる。すざくは思い出す。初めてあったあの時のことを。

「だめ!」

 それを両手ですざくはおしとどめる。

 不思議そうな顔をして、唯依ゆのりはその腕を下げる。

「こんなところからはすぐにでも脱出するのが肝要だろう。このままだと、魔法少女裁判で僕だけではなく、我が君も同じように処断されてしまう」

「葦原さん......」

 すざくはこの時、確信する。唯依ゆのりが言っていることが真実であるということを。

「葦原さんは、大前さんを殺していない。私はそれを信じる。葦原さんが魔法少女だったっとしても」

「一つ聞いていいかな?」

 唯依ゆのりはちょこんと床に座り込み、そう問う。

「我が君が私を信用してくれているのは間違いない。魔法少女の能力によって、それは認証された。ただ、聞いてみたい。なぜ僕をそんなに信じる?」

 そういわれたすざくは、下をうつむきながらボソッと呟く。

「葦原さんは......その......」

「?」

「その......わたしの......ただ一人の......友達......だから......わたしなんかに.....」

 最後は消え入るようなすざくの声に、最初は無言だった唯依ゆのりはそのあとくすっと微笑む。

「そういうことか。まあ、それもこの時代の友人のあり方だろうな。この国も変わったということか。よかろう。我が君はわが友として永遠に仕えることを誓おう」

「あの......」

「なんだい、わが友、物巾部ものきべさま」

 すざくがその呼びかけにもじもじしながら、言葉を絞り出した。

「名前を......名前をよんでほしいな......」

 唯依ゆのりはそれに応じる。

「いいだろう。僕は唯依ゆのり。君はすざくだ」

唯依ゆのり......」

 はい、という返事と同時に唯依ゆのりはすざくを抱きしめる。

 突然の出来事にすざくはかたまる。

 震える手で、唯依ゆのりをそっと抱きしめ返しながら――

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