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第52話 メタルマン、発射する

「“アイス・レーザー!!”」

「ぐううううううッ!! しかし、貴様単独のこの程度ならまだ動けるわ!!」

「なるほど、ならば二倍の出力を出そう。“ツインアーム・アイス・レーザー!!”」

「はあッ?!! ぐぎゃあああああアアアアアッ??!!!」


 先ほどの焼き増しのように、炎の四天王とやらが分かりやすい悲鳴をあげている。

 さて、時間稼ぎと、確かある程度宝石を削れという話だったな。

 私は脳内で先ほどの指示を振り返り、どうするか考えていた。

 もう片方の腕のアイス・レーザー装備を使い始めたのはいいが、問題は残りエネルギー。

 実はさっきまで使っていた片方がもう直ぐ切れそうだった。

 新しく使い始めた方はまだ十分あるが、片腕だと出力が足りないのは判明している。

 両腕が使える今の内に行動したほうがいいな。


 二倍のアイス・レーザーで宝石は露出した。狙うなら今だ。


「ほら、コレでも喰らえ!! “パワー・ミサイル!!”」

「何い!? がああアアァァァアアあッ??!!!」


 そうして、叫び声を上げながら炎の四天王は爆散する。

 狙い通り宝石を破壊する事は出来た。

 だが……


『チイッ……』

『よくもおっ……』

『やってくれおったな……ッ』


 破壊した宝石のカケラから、再度炎が湧き上がる。

復活した十数人が、思い思いに恨み節を上げながら湧き出てきた。


「なるほど、粉々の破片からでも復活してきたか。やれやれ、まるで噂に聞くゴキブリとやらだな」


 私の母艦では既に絶滅しているらしい害虫だが、一匹いれば三十匹はいるという噂らしい。

 ここまで簡単に増えていくのを見ると、ふとそんな話を聞いた事を連想してしまっていた。


『ゴキブリ? なんだか知らぬが、馬鹿にされたような気分になってくるな!!』

『覚悟せよ!! 貴様を空中から引き摺り下ろしてくれる!!』

『喰らえ! “フレイム・ウォール!!”』


 そうして、複数人の内一部が先に動き出す。

 む、先ほどの炎の壁か!! 私一人に対しても撃ってきたか!!

 なるほど、確かに一見逃げ場は無い。ならば。


「いけ! “パワー・ミサイル!!”」

『バカめ!! 先ほど見たその武装で、この“フレイム・ウォール!!”を止められると思うな!!』

「ふん。貴様の弱点はその自信過剰さだな」

『何?』


 私のパワー・ミサイルが、炎の壁に接触して爆発する。

 そして、炎の壁の一部が消滅して、“穴”が開く。

 直ぐに周りの炎が閉じようとするが、その前に私自身がスーツのジェット機能でそこから潜り抜けた。

 それを見た炎の四天王が、信じられないような驚きの声を上げている。


『何いッ?!!』

「一見ド派手な技だが、代わりに炎の密度がそこまででもない。一部に穴を開けるだけなら、一定の爆風さえあれば風穴を開けられる。大した技ではないな」


 まあ、密度がそこまでではないとは言ったが、生身の人間が当たれば即死はする程度の威力はあるな。

 最も、私からしてみれば弱点だらけの技だったというわけだが。

 それを聞いて、炎の四天王が悔しそうな声を上げながらも、別の方法を選ぶようだった。


『チイッ!! ならば、とっておきをくれてやるわぁ!!』

『『『“フレイム・バーナー!!”』』』


 ほう? 火炎放射か。

 それが複数人分を束ねて、同時出し。なるほど、流石にこのスーツでも直撃すれば、魔法のバフがあるとはいえ大ダメージは必至だな。

 私はジェットの勢いで、その場から離脱して難なく回避する。

 が、直ぐに他の炎の四天王から同じものを放たれる予兆を感じ取っていた。

 流石にコレは面倒だな……


「一旦引かせてもらおうか。“ステルス・モード”」

「ッ!? 消えただと?!」


 目の前で私の姿が消えた事に、驚きの声を上げられる。

 私のスーツの機能にあるステルス・モード。

 エネルギーを食うが、完全に透明になれる機能を持っている。

 ただし、武装を使用する時は流石に解除しなければならない弱点はあるが、時間稼ぎには十分だろう。


 一旦距離を取って離脱して……


『ッ!! そこかあぁ!!』

「ッ?! 何!?」


 そう思っていたら、透明になっていた私の所にピンポイントで炎の放出が!?

 ギリギリ回避出来たが、今のは危なかった!

 馬鹿な、私の位置がバレただと!? 攻撃をしたわけでもないのに、その上ステルス・モードに問題は無かったはずだ!?


『は!! 驚いたか!! 俺様は“熱源”さえあれば、それを元に生物の居場所をサーチ出来る!!』

『透明になった程度で、俺様から逃げられると思うな!!』


 先程までの苛立ちが嘘のように、炎の四天王に自信満々となった大きな声でそう宣言されてしまった。

 ……なるほど、熱源サーチ機能。そんな能力を持っていたか。

 事前に聞いていた、ユウカが何度も見つけられて殺されていたらしいという情報があったが、この熱源サーチで既に見つけていたからか?


 それにしては、先ほどのカイトのスタングレネードは聞いていたようだったが……

 ああ、ただ音に驚いていただけが真相か?

 目眩しではなく、音にビビって動きが固くなっていたと言うわけか。

 四天王という割には、簡単にビビるのだな。まあ、大方その不死性のあり方に依存し切って舐めてたからだろう。


「まあ、私自身多少お前を舐めていた事は自覚した」

『はッ!! 今更思い知ったか!!』

『このまま貴様を引き摺り下ろして、燃やし尽くしてくれる!!』


『『『“フレイム・ディスチャージ!!”』』』


 そうして、再度圧縮した炎の束を私に向かって放ってくる。

 ステルス・モードは無意味。ならば回避か、もしくは……


「迎撃か。──いいだろう。思いついた事がある。試させてもらおう」


 そうして、私は両腕に取り付けたアイス・レーザー装置を軽く弄り、出力を“反転”させる。

 知ってるか? 例えば冷蔵庫は冷気を出すが、同時に排出口で熱を出している。

 冷気と熱は表裏一体。ならば、機能を反転するのも比較的容易だ。


「火力勝負と行こう。“フレイム・レーザー!!”」

『っ!? 何ぃ!?』


 そうして、私の両腕から“高圧縮の炎”が放出された。

 それが、敵の炎とぶつかり合う。


『馬鹿め!! よりにもよって、炎の四天王に火力勝負を挑もうなどと!!!』

『おろかにも程がある!! 笑いが出るわ!!』


 先ほどは驚きの声を上げていた炎の四天王だったが、直ぐに調子を取り戻し高笑いを上げていた。

 ……おめでたい頭だ。


「それはこちらのセリフだな」

『……アン?』


 私の言葉が予想外だったのか、疑問の声を上げる四天王。

 ああ、分かりやすく教えてやろう。


「──ただ放出してるだけの炎と、圧縮した炎。どちらが“密度”は濃いと思う?」


 そうして、ぶつかり合っていた互いの炎は、簡単に私に軍配が上がる。

 私のフレイム・レーザーが、相手の技を押し返す!!


『な、何いいいいぃ?!! ぐぎゃああああぁああああ?!!』


 あっさり押し返され、驚愕の声を上げられる。

 そうして、私のレーザーが炎の四天王の数体に直撃した。

 一見、炎の身体に対して炎は効果は無さそうに思えるが……悲鳴を上げているな?


「確か、宝石は赤い“ダイヤ”とやらだったな。……気になっていたのだ。“貴様自身の炎でダイヤは溶けないのか?”」


 そう、ダイヤは宝石と言えど、炭素の塊。

 そんなものを炎に晒したら、簡単に燃えてしまう。

 なのに、あやつの宝石は燃え尽きてはいない。魔法とやらで保護してるのか、熱に特別に強い宝石なのかは分からない。

 とにかく、簡単に自滅しない程度の対策はしてあるのだろうと。


 そこで思った。

 “アイツの身に纏っている以上の火力を、直接ぶつけてみたらどうなるだろうか?” と……


 結果は……予想通り、直撃した個体は“消滅”した。

 宝石が、完全に燃え尽きたのだろう。新たな分身も出ていない。


「なるほど、よく分かった。コレなら貴様らを完全消滅に至れる、という事がな」

『『『──────』』』


 この光景を見た炎の四天王共は、言葉を失い──爆発した。


『『『──かかれえええええええええぇエェェッッ!!!!』』』


 私に向かって、今まで以上にがむしゃらになって攻撃し始めて来たのだった。

 まあ、当然か。今まで完全消滅までは殆ど経験ないだろうに、それを行える可能性のある敵が現れたのだから。


 このまま全員返り討ちにしたいが……


「流石に、エネルギー切れか……一旦撤退だな」

『『『待てえええええぇエェェッッ!!!!』』』


 私は十分に仕事を果たしたと判断し、マホ達の方へ撤退を開始した……




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