「──はああああッ!!」
「ぐアアアアアッ?!!」
カイトとメタルマンのサポートで、片方の炎の四天王の宝石を再度叩っ斬れた。
しかし、再度半分に切れた宝石が魔力を垂れ流し──
「「「ぐうっ、貴様らあああ!!」」」
直ぐに体を再構成し、3人に増え出した。
全員が全く同じリアクションを取っているのが、より同一人物だという事を実感する。
ック、やっぱり増えてしまうか……! 一応さっきより聖なる魔力を高めた刀身で叩っ斬ったんだけど、これでも駄目か!?
「くっそう! また増えたな!!」
「寿命200年が一人と、100年が二人か。チイ、あの幼女の言っていた1秒にするためには、あと何百、何千回必要だ……!?」
3人に増えた炎の四天王。
ボクとカイト、メタルマンで丁度3人ずつ。
一対一だと、それぞれで一時的に抵抗するのは出来るかもしれない。
でもそれだと倒せないから、チームとして上手く立ち回って3対1の状況を作り続ける必要がある。
けれど、それでも再度増えてしまうと、どう考えても対処出来なくなる!
一気に連続で分割する必要が出てくるけど、結局どうすれば……!
「ユウカちゃん! 戻ってきてー!」
「ソラ様?」
そう覚悟を決めていると、ソラ様に呼び出された。
「行って来いユウカ! 俺たちが抑える!」
「仕方ないな!! まあこの程度、楽勝だがな!」
「防衛突破されても大丈夫でーす! こっちで抑えますからー!」
「「「ぐオオオッッッ?!!」」」
「あ、ありがとう! 直ぐに戻る!」
そう言って、カイトとメタルマンが3人の四天王を足止めしてくれていた。
ボクはお礼を言って、急いで彼女の元に戻って行く……
☆★☆
「ソラ様、どうしました?」
そう聞くと、彼女は真剣な表情で──
「──ユウカちゃん。あなたまだ、“本気を出していないでしょ”」
──え?
「……どういう、事ですか? ボクはいつだって、本気で……」
「ごめん、言い方悪かったかもしれない。あなたまだ、“全力の一撃を使ってないでしょ”」
そういったソラ様の表情は、予想では無く確実にあると確信している様子だった。
……“全力の一撃?”
そんなことは、無かった筈だった。心当たりが、無い。
──今回のループでの、“シャイニング・レイ”の話だろうか?
唯一の心当たりといえば、それくらいしか無かった。
ボクの最強奥義に当たるのが、その技だからだ。
確かに、今回はまだ使った覚えがない。
しかしループしている間に、その技は一度放っていた経験がある。
あの時は、炎の四天王に当たったと思ったのに、無傷で現れた覚えがある。
今思えば、あれはコアの宝石をあまり削り切れていなかったのだろう。
高出力の光のエネルギーを叩き込む技だが、生身では無い、固い宝石相手だと対して効果的では無かったのだろう。
ボクの最大火力の“シャイニング・レイ”は、以前メタルマン達との喧嘩で出したあれが最大出力だった。
あれと同等の威力を、炎の四天王にぶつけたつもりだった。
つまり、“シャイニング・レイ”単独ではあまり炎の四天王に効果的では無い。
それなら、直接宝石を刀身で切った方が早い。
だから、全力の一撃という意味で、“シャイニング・レイ”を使う意味なんて──
「──あ」
ふと、気づく。
ある。確かに、ソラ様の言う“全力の一撃”がある。
でもそれは、使わなかったというより、“実戦で当てるのは現実的じゃ無かった”から、選択肢から最初から外していただけで……
「ユウカちゃん」
そう考えていると、ソラ様はそっと私の頬に手を添えて……
「──ここには、あなたの信頼出来る仲間が沢山いるよ」
「──ッ!」
「あなたを支える、あなたを守ってくれる人達が、みんな集まってる。……私も、そうよ」
そう言ったソラ様の顔は、慈愛に満ちていた。
「ソラ、様……」
「……カイトがいる。メタルマンがいる。マホちゃんがいる。私がいる! ──だから、全力で! あなたの渾身の一撃を、お見舞いしてやりなさい!!」
「──はい!!」
ボクは頷いて、身体を振り返る。
視線の先には、カイトとメタルマンが炎の四天王それぞれと戦ってる状況。
それを見て、ボクは聖剣を両手で持って、目の前に掲げる。
「ユウカさん! 防御は任せてください! 最後まで守り切ってあげます!」
「マホ……ありがとう!」
ボクはその姿勢のまま彼女にお礼を言う。
彼女がボクの目の前に立ってくれたのを確認して、ボクは準備を始める。
「──告げる。聖剣よ、ここに宣言する」
──“詠唱”。
聖剣との契約を宣言し、その身に宿る精霊との繋がりを成すことで、威力を上げる。
今まで、実戦で使って来た事はなかった。
到底、敵の目の前で長々と言葉を紡ぐ時間なんて無かったから。
実戦には向かない、せいぜい王城での見せ物用の技術としか捉えていなかった。
──けれど、ここなら違う。
メタルマンがいる。
マホがいる。
ソラ様がいる。
──カイトが、いる。
彼らがいる今なら、この技術は逆境を打破する、希望の光となる。
「──光の精霊よ。我が問い掛けに答えよ。我が身、人の敵に相対する。貴殿よ、その輝きを示したまえ」
……普通の“シャイニング・レイ”ではダメ。宝石を消し切れない。それは分かってる。
ならばどうするか。
「──火の精霊よ。我が問い掛けに答えよ。我が身、人の敵に相対する。貴殿よ、その情熱を示したまえ」
──もっともっと威力を上げれば良いだけだ。宝石を、消し去るくらいに。
「──水の精霊よ──」
だから、みんな……カイト。もう少しだけ、お願い。
“ワタシ”は、そう心の中で彼らに頼んでいた……