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第22話 ウチに魔法少女がやって来た


『魔法少女! プリティーラミー、ここに見参!!』

「キャー! ラミーちゃん頑張ってーっ!!」

「おい、ニチアサ見るのはいいけど、食べた後の食器片付けろよ!」


 朝食を食べた後、すかさずテレビに向かって行ったソラに対し、俺はそう注意をする。

 それを聞いてはーい、あとでねーと生返事をして来やがった。

 たく、変に乾いて汚れ取れなくなるだろーが、あとで自分で洗わせよう……


 昨日のメタルマンの騒動といい、ユウカを慰めるといい、昨日だけで散々疲れていた……

 だから今日の俺は、絶対のんびり過ごそうとそう思っている。

 ひとまず片付けを終えた俺は、ソラの近くのソファーに座りこんだ。


「しっかし、魔法少女っていいわねー。夢があって、女の子の憧れの的ね」

「お前、一応女神とか言ってなかったか? そう考えると、女の子って歳……いた、いた!? 蹴るな!?」

「デリカシーの無い男への罰でーす。少なくとも、分神の私は今ガチの10歳児何だから、女の子で正解なんですー」


 俺を蹴りながら、ブーっとほっぺたを膨らませてそう反論してくるソラ。


「ふーん。じゃあ本体は……」

「今は“私”の話をしているの。“本体”は関係無いの。いいわね?」

「あ、うん……」


 真顔になって淡々とそう言って来たので、この話題は止めることにした。もしや、気にしてる……?

 そうこう言っているうちに、番組が終わりそうになっている。


『食らえ!! マジカルスーパーウルトラハイパーキッーク!!』

『ぐあアアアアアッ!!!』

『次回もまた、見てね!!』


「あー、面白かったー! また来週が楽しみね!」

「そうか、良かったな。じゃあ食器片付けとけよ」

「ブー、せめて余韻に浸らせてくれてもいいじゃない」


 プンプンと文句を言いながらも、テーブルに向かって自分の食器を流しに持っていくソラ。

 自分で言った事だろ、ならちゃんとしないとなー。


「ねえ、カイトー。私もあんな、フリフリの魔法少女っぽい服が欲しいー」

「いや、いらねえだろ? あんな格好で外で歩けるかよ」

「じゃあ、普通の服でいいから可愛いの欲しいー。正直私服まだ足りなくて」

「たく、最初からそう言えって」


 そうして俺は、財布の中身を確認する。まあ、少しは買える余裕があるか……

 女の子にとって服は結構複数いるらしいもの。その程度の常識は俺にもあった。

 確かに最低限の着替え分くらいしかこの間買ってなかったから、それだけで我慢させるのは忍びない、か……

 たく、勝手に居住着いたのはそっちだってーのに、衣食住管理しなきゃいけないこっちの身にもなれってんだ。


 俺は文句を言いながらも、どの道そのままにしておくのもあれなので、大人しく服を買いに行く準備をし始めた。


「ついでに、俺も服そろそろ補充するかな。確か、今何着あったっけ……?」


 いい機会なので、ソラだけでなく自分も服を新調しよう。

 俺はそう思って、自分がどれくらい服を持っているか確認しようと、クローゼットに向かって行った。

 そうして、扉をパタンと開く。


 ──そこには、あった筈の男物の服など欠片も無く。

 スカートなどの、明らかに女の子の着るような衣服だらけ。

 そして、その奥には……


「……ん? あれ? え!? 男の人!? 何で!?」


 どう見ても、“魔法少女の格好をした女の子”が。

 よく見るとクローゼットの奥側が、見た感じ別の部屋になっている。


「すいません、間違えました」

「え、ちょ……」


 そう誤って、俺はパタンと扉を閉めた。

 1、2歩下がってクローゼットをうーん、と眺める。

 やっぱり俺の家のクローゼットだよな、うん。と言う事は……


「……よし、見なかった事にしよう」


 うん。どうせソラ関連だろう。うん。

 これ以上面倒ごとはごめんだからな。このまま見なかった事に……


 直後、バンッ! と音を立てて開くクローゼット。


「うっわあ!? 何これ、私の部屋のクローゼットの奥に別の部屋が!? 何これ知らない!? 秘密部屋!? それとも魔法で繋げられた!? と言う事はあなた、不審者さん!?」


 そこから、さっきチラリと見えた魔法少女がガッツリと部屋に入ってきた。

 ッチイ!!


「ちょっとカイトー、さっきから何叫んで……」

「あれ、女の子もいる!? うわー可愛い! 10歳位!?」

「……は?」


 すると、騒動を聞いて様子を見にきたのかソラがやって来た。

 こっちを見ると、驚いたような表情で俺と魔法少女の女の子を交互に見つめており……


 ……突如、バッと走り去っていくソラ。

 追いかけてみると、リビングの固定電話に向かっており……


 プルル。プルル。ガチャ。


「あ。もしもし警察ですか?」


「ソオいぃッ!!」


 ソラの頭の上に、俺の全力チョップが振り下ろされる事になったのだった……


 ☆★☆


「何よ!! あなたが15歳くらいの女の子連れ込んで、魔法少女の格好にさせてたから警察に電話しようとしてただけじゃない!! と言うか、私と初対面の時あなたもやろうとしたでしょーが!?」

「うっせえ!? 俺の時はお前ガチ不審者だったろうが!! どう見てもコイツ、お前/女神案件だろーが!?」

「お兄さん達、喧嘩しちゃダメです!!」

「「あ、すみません」」


 互いに罵り合っている中、魔法少女の女の子に怒られて、俺たちは素直に誤っていた。

 今はリビングで、魔法少女の女の子も含んで3人で集まっている状態だった。


「ところで、えっと……名前は?」

「私は“マホ”って言います! よろしくね、お兄さん!」

「そっか、俺はカイト」

「私はソラよ! よろしくね!」


 互いに簡単に名前を自己紹介した後、マホが言いづらそうに切り出した。


「えっと。それで、この場所は一体どこなのでしょうか? お兄さんや、ソラちゃんは……」

「あー、えっとねー……」


 カクカクシカジカ。

 そう言って、ユウカやメタルマンの時のような説明をマホにしていくソラ。

 ふむふむ、とソラの言葉に頷きながら相槌を入れていくマホ。

 そして、だんだん驚いたような表情になっていき……


「何と!? 異世界なんですかこの場所って?! そしてあなたが夢で見た女神様! ……の、分神さん!!」

「そうよー! 崇めさない、祀りたてなさい!」

「ははーっ!」


 そう言って土下座までしているマホ、それを見て更に調子に乗るソラだった。


「それで、そこにあるのがセーブクリスタルとやらですね! 私はそれを使わなくてはいけないと!」

「そうよ、その通り!! 話が早くて助かるわー!」


 いや、本当に受け入れるのがはえーなおい。メタルマンの時とは大違いだ

 あれか、魔法がある世界の存在だからか、そんなに不思議じゃなかったのか?


 そう思っている最中、早速セーブクリスタルでセーブをしたマホだった。


「これでいいでしょうか、ソラちゃん!」

「OK! バッチリ!」

「これで私は、失敗したときでもこの場所に戻れると言う事ですね!」


 そう元気よく確認した言葉に、俺はちょっと“疑問”に思ったことがあった。

 マホに聞こえないよう、こっそりソラに耳打ちする。

 おいソラ、ちょっと……


「(……ん? 何かしら)」

「(コイツもセーブポイント使用者って事は……“この子も死ぬのか?”)」


 俺はそう、ソラに確認した。

 ユウカの時は、オークに殺されていた。

 メタルマンの時は、機械生命体に攻め込まれて殺されていた。

 この二人は、女神としてソラが選んだ二人のはずだ。


 だとすれば、“この子も死ぬような目に遭うのか?” それが疑問に思った。

 だとしたら、まだ15歳の女の子にそのような経験が待っているなんて、残酷にも程があると思ったからだ。


「(……そうとは限らない。必ず死ぬとはね。けれど、このままだと“不幸な結末”が待っているのは確かよ)」

「(……そうか)」


 俺はそれを聞いて、そっとソラから体を離した。

 死ぬわけではない、としても、不幸な結末が待っている、か……

 ッチ、どいつもコイツも……!!


 俺は無性に、頭をガシガシと掻きむしりたくなっていた。


「……あの〜?」

「ん? ああ、はいはいごめんなさい、放っておいちゃって。とりあえず説明は以上だけど、何か質問したい事とかあるかしら?」


 俺の感情とは他所に、ソラがマホに対してそう受け答えしていた。

 それに対しえっと……と、マホは呟き。


「セーブポイントでセーブ出来たって言うのはわかったんですけど、ロードってどうすればいいんですか? 完全自動ですか?」

「まあ、本人が死──」


 俺はゴツッとソラの頭を叩く。


「──本人が“完全に力尽きた時”、または、“本人がロードしたい”、と念じた時ね。口に出すとやりやすいかも」

「ふむふむ、なるほどぉ……試してみてもいいですか?」


 それに対して、ソラはどうぞーと許可を出す。

 マホは恐る恐る、ロード、と唱えると、メタルマンの時のように一瞬光ってセーブクリスタルの前に現れた。


「──おお〜!? こんな感じなんですね!?」

「そうそう! それでセーブポイント直後に戻っているわ!」


 へえー、とマホは自分の体を見渡していた。

 まあ、セーブしてから殆ど時間が経っていないから、そんなに自覚はないだろうが……


「ふーん……」


 同じことを思ったのか、マホも段々疑問に思ったような顔になっており……

 ふと、スタスタとウチのテーブルの前まで歩いていったと思ったら……


「えいっ☆」


 ガンッ!! と、“自分の腕をテーブルの角に叩きつけていた”。


「──は? おい!?」

「いったあ……っ。ロード!!」


 急に何をしたかと思えば、直後ロードの言葉を唱える。

 すると、先ほどと同様、セーブクリスタルの前に現れた。

 自分の腕を、改めて確かめるように見ている。


「……おお! 本当に痛みが治っていますね!?」

「そうよー! 凄いでしょ!」

「そうよー、じゃねえ!? おい、それを確かめるためだけに自分の腕ぶつけたのかよ!?」

「へ? そうですよ?」


 そう聞くと、当たり前のことのようにマホは返事していた。

 いや、だからと言ってそんな躊躇なく……?


「あっ、大丈夫です! この程度の怪我、日常茶飯事なので!」

「日常茶飯事って……」

「まあ、ニチアサの世界みたいなものなら、そうでしょうね」


 俺はその言葉を聞いて、やっぱりこの世界の子も大変何だな、と改めて実感していた……


「ところで、すみません」

「ん? 何かしら?」


「──もっとこれ、いろいろ試して見てもいいですか?」


 そう言ったマホの顔は、何らかのイタズラを思いついたような表情をしていた……



 魔法少女:マホ

 本名:楯野真穂(たてのマホ)

 15歳

 158cm

 ピンク髪

 秩序・善

 女


 ニチアサの魔法少女世界からやってきた、魔法少女。

 主に魔法で作った盾を使用した戦い方をする。

 素直な性格で、セーブポイントの話についてもすぐに信じた。

 セーブポイントの仕様を聞いて、何か思いついたようだが……?


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