◆<聖女クレアside ~三人称視点~>
ルーズとの邂逅の後、クレアは騎士団長ソルファを治療した。全身大火傷を覆っているソルファへ女神さまの加護による〝治療〟を施したが、ソルファの命に別状は無かったものの、全身に火傷の痕は残る事となった。心此処にあらずなクレアはそのまま自室へ。厳重な警備の下、彼女はまるで幽閉されているような状況に置かれた。
「あの時のルーズがアンリエッタでないならば……一体、アンリエッタは何処に居るの?」
そして、クレアのアンリエッタへの想いは消えないまま時は過ぎ、闘技大会準々決勝の再開に至る。
「もし、アンリエッタが会場に居るならば……。魔力感知を研ぎ澄ませておかなくてはなりませんね」
もしかすると、アンリエッタがまだ会場に居るかもしれない。そう考えたクレアは闇の魔力への警戒も含め、感覚を研ぎ澄ませる。魔力には人それぞれの特徴があり、魔力感知に長けた者は感覚で一度憶えた魔力を感知出来る。但し、相手が魔力の気配を消していた場合は別なのだが。
闘技大会の試合は進み、王国から出場の
槍術使いの
そして、クレイへ視線を向けた瞬間、クレアが予想だにしていなかった違和感に気づく。
「え? 嘘!? どうしてあの人からアンリエッタの魔力を感じるの!?」
元々魔力を抑えているのだろう。クレイが持つ魔力の揺らぎはごく僅か。前回の試合では気づかなかった妹の魔力。温かく優しさに満ち溢れたクレアにとってお日様のように懐かしい魔力。何故かクレイが持つ重く深く研ぎ澄まされた魔力と混ざり合って、アンリエッタの魔力を感じたのだ。
(どうして……まさかアンリエッタ……魔国で奴隷にされて……彼に人体実験をされて……)
グリモワールの図書館で禁書に触れたせいで脳裏に良からぬ疑念が浮かんだっため、慌てて首を振り掻き消すクレア。そんな聖女の不安を他所に、舞台上では白熱した試合が展開されていた。
「ああっと! 大会中、傷を負っていなかったクレイ選手。此処へ来て初めて傷を負いましたぁ~!」
「見たか、俺っちの
マンテイルが持つ
「もう終わりですかい? 俺っちの
「いいだろう。ならば、こちらも少し見せてやる。
「なっ、消え……」
ソルファが得意としていた
槍を失い、両脚の
「参った」
「勝者、クレイ・グラディウス!」
ソルファの剣戟も子供騙しに見えてしまう、剣術に関しては素人のクレアでさえそう思わせてしまう程の闘いぶり。そんな中、ふとクレアが隣を見ると、何故か全身を震わせている王子の姿があった。
「あいつ……
「エルフィン、あなた。
クレアは驚く。魔力感知を研ぎ澄ませていたからこそ、姿は捉えられずとも、魔力が移動した場所は補足出来た。雷の魔力も僅かに感じていた。が、その姿を捉える者はこの場に居ない……クレアはそう思っていた。
「当たり前だよ、クレア。僕を誰だと思っているんだい?」
「エルフィン、あなた。強いのね」
「お! 僕の事、見直したかい?」
「素直に凄いとは思いましたわ」
特に最近、クレアから褒められる事が無かった王子は鼻高々。クレイという剣士からアンリエッタを感じ取っていたクレアの意識はそれどころではなかったのだが。
(アンリエッタはもしかして、何かで気配を消しているのかも。なら、このクレイという剣士を追えば……アンリエッタへの手掛かりを掴めるかもしれませんわ)
「おい、クレイ・グラディウスが何者か、今すぐ調べろ!」
「は」
エルフィンが背後に控えていた兵士へ告げ、兵士が裏へと下がる。
こうしてエルフィン、クレアは互いに違う意図で残りの試合、魔国から来た謎の剣士、クレイ・グラディウスの動向を追う事となる。