三十路になった私。金色の糸で結ばれた結婚相手はまさかの狸妖怪!?
魚住真琴
恋愛結婚生活
2024年11月18日
公開日
13.4万字
連載中
※水・金週2更新(時々週3→その場合月・水・金)です
人は糸で結ばれている。その糸は色によって意味が違う。
代表的なものでいうと、黒は不運。白は幸運。赤は好かれている人の数。
太さによって効果や思いの重さが違うその糸が見えるのは、葛葉神社の巫女のみ。
切ったり、結び変えたりできるのも、巫女のみ。
それらの糸の中で滅多にない色がある。
それが、運命の糸。
色は金色(こんじき)。
金色の糸で結ばれたものは、必ず結婚することになる。
運命の糸は巫女であっても解いたり切ったり出来ないほど強い力を持つ。
しかし、輝かしいその色の糸に出会うことは、めったにない。
30歳になっても、自分から伸びる糸が見えることのなかった巫女、楠葉は自分には縁のない糸たちなのだろうと割り切って巫女としての仕事に生涯を注ぐことに決めていた。
そんなある日、空が真っ赤に染まった夕暮れ時。
巫女である楠葉が葛葉神社の鳥居の下を2回くぐった、刹那。
金色の糸が現れ、その先には黒い袴を纏った茶髪の男が居た。
しかしその正体は、人間に化けた狸。しかも不死身で倒すことのできない、悪戯好きの妖怪バカ狸。
あまりの驚きで妖怪と認識する前に、見たことのない美男な容姿に見惚れてしまった楠葉は幻惑をかけられて結婚させられることに。
その結婚生活は勿論平和なわけがなくて……!?
これは、三十路になって男に対して耐性のない気の強い巫女と、悪戯好きからかい好き迷惑行為大好き妖怪の化け狸の夫婦による奇想天外の結婚生活物語。
プロローグ
“糸”
それが空中で常に漂い続けているのを皆さんはご存じでしょうか?
実は、今も皆さんの周りで漂い続けています。
でも、今見えないということは、この先ずっと見えないことでしょう。
なんせそれは、特別な力を持つ者にしか見えない妖怪の糸なのですから。
だから見えない人には勿論、触ることなどできません。
見える人でも、少数の者しかその糸を触ることができません。
しかし、その糸は必ずあるのです。
空気のように、ずっと漂い続けているのです。
赤、白、黒、と様々な色をした見えない糸は、確かにこの世に存在するのです。
ですがやはり所詮糸ですから、切ったり、絡まったり、勝手に取れたりしてしまいます。
けれども、その中で唯一、誰も操れず、取れることのない強固な糸がございます。
それが、金色の糸
金色の糸に結ばれた男女は、今世で唯一の運命の人。
これは絶対的存在である分、貴重で少ない糸。
例え夫婦として、カップルとして手を繋いでいる男女がいても、赤い糸という定番の糸がつながれているばかりで金色であることは滅多にございません。
しかし、金色の糸で結ばれた者に出会うと、誰しもが気づかずその人に惹かれ、例え既婚者であっても、年齢が違っても、運命だと直感し、必ず結ばれます。
そしてこの金色の糸は、突然出現します。
生まれてからあるものではありません。
出会ってからしか生まれないのが、運命の金色の糸。
だから人は、運命の人に中々出会えないものなのです。
この物語は、その金色の糸で人ならざる者と結ばれた、とある巫女のお話――