終章 未来へ
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一瞬の体感時間の後に、シルバの視野は開けた。周囲には、見慣れた円形闘技場の風景が広がっている。位置は地下に潜った近辺だったが、行きにはあった鉄の板は見受けられない。
なおも地面を見回していると、少し先に二人倒れていた。怪我が完全に治っているリィファと、髪色が白から金に戻ったフランだった。シルバが近づくと、リィファがゆるゆると立ち上がった。
リィファの隣まで来て、シルバはフランを凝視した。リィファも、睨み付けるような鋭い視線をフランにくれている。
ややあって、フランの両手の指先がぴくっと動いた。そろそろと地面に手を突いて立ち、二人に向き直る。
フランはふっと、深遠な笑みを浮かべた。
(まだやるってのかよ。上等だ。ジュリアの敵だ。完膚なきまでぶちのめしてやる)
一瞬で警戒を強めたシルバは身構えた。隣ではリィファも、油断なくフランを見つめて続けている。
だが次の瞬間、ふうっとフランの身体は虚空へと溶けていった。