目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第39話

       39


 シルバは以降、かつてないほどの集中で戦闘を続けた。しかし力の差は歴然で、ずっと押され気味の展開だった。

 ブォン! 屈んだシルバの頭上を、アルマーダが通り抜けた。あまりの破壊力に肝を冷やしながらも、シルバは前に跳び、カイオに滑り込んでいった。カイオの軸足への低空の蟹挟みである。

 カイオは、ほぼ同時に真左に身体を傾け始めた。シルバの右脚の到達の直前で、脚を地から離す。

 躍動的な側転を視界の端に捉えながら、シルバは素早く身体を起こした。向き直ると、カイオは既に姿勢を戻していた。畳んだ右腕が肩まで上がる。外から内に回しつつ、突き進んでくる。

 シルバは型通り、左手を右上腕に添えた。

 右手の中心でゴデーミ(肘打ち)を受けるも、ガッ! 肩への予想外の衝撃に、シルバは僅かに仰け反った。反撃の平手打ちも繰り出せなくなる。

 肘を引きつつ、カイオは折った右膝を持ち上げた。一瞬の静止の後、ぐんっと右足を一直線にする。

 シルバの鳩尾に親指が命中。骨が移動するかのような苦痛とともに、シルバは後ろに飛ばされた。なんとか足踏みをして、転倒だけは免れる。

 後方への勢いを殺し、シルバは一息を吐いた。刹那、カイオの両足が躍動。どんっと地を蹴り、急速にシルバに接近していく。

(……な! 速過ぎ……)

 狼狽するシルバに、カイオの伸ばした両手が迫る。

 バチン! 両耳と耳の後ろの骨を、鋭い痛みが襲った。平衡感覚が狂い、くらりとよろける。

 カイオは大きく両手を掲げた。振り下げとともに上半身を直角に倒すと、右足をふわりと浮かす。

 手を宙に据えて行う側転じみた技――エストレイラ。完璧に決まり、右、左の順でカイオの足が顔に突き刺さった。

 左足の衝突の瞬間、シルバの身体は急加速した。受け身を取ろうとするも、失敗。側頭を強打し、頭のぐらつきは極限まで至る。

(……ふざけんな。こんなところで、俺は……)

 無理やりに自分を奮い立たせるが、ずたずたの身体は思うように動かない。ふっと手から力が抜けて、シルバは気を失った。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?