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シルバは以降、かつてないほどの集中で戦闘を続けた。しかし力の差は歴然で、ずっと押され気味の展開だった。
ブォン! 屈んだシルバの頭上を、アルマーダが通り抜けた。あまりの破壊力に肝を冷やしながらも、シルバは前に跳び、カイオに滑り込んでいった。カイオの軸足への低空の蟹挟みである。
カイオは、ほぼ同時に真左に身体を傾け始めた。シルバの右脚の到達の直前で、脚を地から離す。
躍動的な側転を視界の端に捉えながら、シルバは素早く身体を起こした。向き直ると、カイオは既に姿勢を戻していた。畳んだ右腕が肩まで上がる。外から内に回しつつ、突き進んでくる。
シルバは型通り、左手を右上腕に添えた。
右手の中心でゴデーミ(肘打ち)を受けるも、ガッ! 肩への予想外の衝撃に、シルバは僅かに仰け反った。反撃の平手打ちも繰り出せなくなる。
肘を引きつつ、カイオは折った右膝を持ち上げた。一瞬の静止の後、ぐんっと右足を一直線にする。
シルバの鳩尾に親指が命中。骨が移動するかのような苦痛とともに、シルバは後ろに飛ばされた。なんとか足踏みをして、転倒だけは免れる。
後方への勢いを殺し、シルバは一息を吐いた。刹那、カイオの両足が躍動。どんっと地を蹴り、急速にシルバに接近していく。
(……な! 速過ぎ……)
狼狽するシルバに、カイオの伸ばした両手が迫る。
バチン! 両耳と耳の後ろの骨を、鋭い痛みが襲った。平衡感覚が狂い、くらりとよろける。
カイオは大きく両手を掲げた。振り下げとともに上半身を直角に倒すと、右足をふわりと浮かす。
手を宙に据えて行う側転じみた技――エストレイラ。完璧に決まり、右、左の順でカイオの足が顔に突き刺さった。
左足の衝突の瞬間、シルバの身体は急加速した。受け身を取ろうとするも、失敗。側頭を強打し、頭のぐらつきは極限まで至る。
(……ふざけんな。こんなところで、俺は……)
無理やりに自分を奮い立たせるが、ずたずたの身体は思うように動かない。ふっと手から力が抜けて、シルバは気を失った。