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第28話

       28


 シルバに迫られたウォルコットは、足をやや進めた。間髪を入れずに、左でパンチを撃ってくる。

 すとんと身体を落として、シルバは避けた。両手を右後ろの地面に着けて、伸ばした左足を前百八十度に振り回す。踝を狙った足払い、アルヴァンカである。

 食らったウォルコットは、僅かに下半身をぐらつかせた。腰を軽く上げたシルバは、後ろ向きのまま左足を曲げた。溜めた力を開放して、ウォルコットを蹴り上げる。

 攻撃は脇腹に当たるが、ウォルコットは堪えた。シルバは離脱しようとするが、ウォルコットはぐるんと、細長い楕円状に右足を高々と上げた。

(ネリョチャギ! もらうわけには……!)

 片足ジャンプで、シルバはどうにか身体をずらした。踵落としが尻を掠めて、全身に衝撃が加わる。

 耐え切ったシルバは、縦の円を描いて直立に戻った。振り向きながら大きくジャンプ。右の踵を、フル・パワーでぶん回す。学生時代に修得した、付け焼刃のティミョパンデトルリョチャギ(跳び後ろ回し蹴り)だった。

 ドゴッ! ヒットの瞬間、側頭部から鈍い音がして、ウォルコットはがくんと左に落ちていった。

 即座にシルバは前方宙返り。両足で腹を踏み付けると、ウォルコットは、がはっと苦しげに呻いた。

 バランスを崩すが後転で退避し、シルバは起き上がった。地に伏すウォルコットを注視していると、だんだんとウォルコットの姿が消えていく。

 視線を上に移したシルバは、予期していた現象に気を引き締め直した。天井からはするすると、体格の良い男が下ってきていた。

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