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客席の下のスペースを抜けて、二人は内部に到達した。
草の少ない広大な土地を風が吹き曝しており、武闘会の時以上に寂しげな雰囲気だった。
人がいないと確認した後に、二人は中央へと歩みを進めた。夢の記憶を頼りに、シルバは地面を調べて回る。
ほどなくして、鈍い灰色の突起が目に入った。接近したシルバは、近くで同じような行動をしていたリィファに教えた。
二人して周りの土を退けると、鉄の板が姿を現した。
一辺が大人の足の三倍ぐらいの正方形で、先ほど見えていた部分は取っ手だった。
「こんなに目立つ物がずっとあったら、絶対に誰かが発見してますよね。ちょっと前には武闘会も開かれましたし」
リィファは鉄板に不思議そうな視線を遣りつつ、訝しげに呟いた。
「武闘会が終わった後に、何らかの理由で出現したって推察が妥当だろな。にわかには信じ難いがよ」
不審な思いを抱きつつ、シルバは取っ手を両手で持った。
全力で真上に引いていると、リィファが反対側から手を差し伸べ、シルバに助力を始めた。
すぐにぼこっと音がして、鉄板は外れた。脇に板を置いたシルバは、板の下の空間を覗き込んだ。
地面から黄土色の古風な階段が続いており、両横には似た雰囲気のブロックが積み上げられている。十段より先は、暗闇に包まれて見えなかった。
シルバを先頭にして二人は進み始めた。
後ろのリィファは七段下りてから、鉄の板で再び階段を隠した。暴徒の追撃を防ぐためだった。
階段は果てしなく続き、しだいにひんやりとしてきた。全くの無音だったが、終始何かが息づいているような気配がしていた。
百段ほど下った頃に、前方の闇が僅かに黄土色を帯びた。さらに行くと壁がはっきりと見え始め、その手前で階段が途切れていた。
下り切った二人は、経路に従って左折した。通路は一人分の幅で、天井はシルバの背丈より少し高い程度だった。
壁には等間隔に、握り拳大の白球が埋め込まれている。それぞれの放つ仄かな光で、周囲はほんのりと明るかった。
十歩ほど歩いたシルバは、黒々とした木の扉の前で立ち止まった。後ろを振り向くと、リィファが重々しい表情で小さく頷いた。
向き直ったシルバは、鉄の取っ手を押した。ぎっと小さな音の後に扉は完全に開き、二人は中へと入っていった。