19
聖堂の裏手の一際、広大な草地には、百以上の墓石が等間隔に並んでいた。納棺の儀の直後、多くの参列者たちが見守る中でジュリアは埋葬された。
主教が安らかな語調で儀式を締め括ると、参列者たちはゆっくりと去り始めた。
しかしトウゴは、依然としてジュリアの墓に目を落としていた。僅か後方に位置するシルバは、同様に黙り込んでいる。
「娘が死んだ。単純明快な事実なのに、どうもふわふわと現実感がない。果てしない悲しみを、遥か上から見下ろしている感じというか、な。起きた事件が、あまりにも突拍子もなかったからか。いや、ジュリアが自分より先に死ぬなんて、想像すらしてなかったからかな」
背を向けたまま、トウゴは呟いた。口振りは平静にも拘わらず、シルバの耳にはとてつもなく重く響いた。僅かに風が吹き、墓石の間の緑が揺れる。
「大事な人を救おうとして、命を落とす。ジュリアにとっちゃあ、理想の生涯の閉じ方だったのかもな。でもこんなに若い、いや幼いうちに……。死ぬことなんて……」
「申し訳ありません。何をどう償えばいいか。……俺がもっと強ければ、ジュリアが俺を助ける展開にはならなかった。もしくはもっと厳しく言い聞かせて、俺がどうなろうともジュリアには逃げるようにしてれば。くそっ! 俺は……。俺は自分の弱さが……。弱さと判断の悪さが憎い!」
沈鬱な気持ちのシルバは、地面に目を落とした。
「いいや、シルバ君には責任がないさ。もうやめてくれ。娘が死ぬだけで辛いのに、君までそんなに塞ぎ込んではもう俺はどうしていいのかわからないよ」
トウゴの淡々とした嘆きは、薄寒い大気に溶けていった。シルバはトウゴの言葉の一つ一つを反芻し、未来永劫忘れまいと己に誓っていた。