18
ジュリアは、シルバの来訪の直前に亡くなっていた。死因は、黒服の突きが齎した心停止だった。
午後九時、シルバとトウゴは聖堂にいた。リィファはいまだ昏睡状態で、姿はなかった。
冷ややかな石の床上には、六つの長椅子が一列に並んでいた。シルバたちの他にも、ジュリアの学友や教師陣が着席している。アストーリで昔から行われている納棺の儀だった。
壁はそそり立つかのように高く、頭上で優美なアーチを描いていた。窓はなく、蝋燭の灯りが幻想的に周りを照らしている。
聖堂内の物は、ほぼ全てが白に近い灰色だった。例外は正面、壁面に掛かった十字架の直下の、ジュリアの近辺である。
黒い棺の中、無表情で目を閉じるジュリアは、赤、黄、青。取り取りの草花に囲まれていた。
しばらくして、黒色のゆったりした形の老人の主教が前に出てきた。左手に持っていた薄い本を開き、静謐な佇まいで息を吸い込んだ。
古より伝わる葬送曲が厳かに響き始める。シルバが黙する一方で、年配の者たちが主教に続く。
やがて曲は佳境を迎えた。柔らかく透き通るような流麗さが辺りを包んだ。シルバは不思議と静穏な心地で、ジュリアの白い顔を見詰めていた。