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シルバは以後もずっと、ジュリアの蘇生を試みていた。しばらくすると、白色の衣服で四肢を覆った三人の救護隊が現れた。一人がシルバに事情を聞きつつ、残りがジュリアを担架に乗せる。
その場を後にしようとする救護隊に、シルバは早口で同行を申し出た。
が、「君が来たって何もできない。私たちが誇りに懸けても命を繋ぎ止めるから、あいつらをやっつけてくれ」と最年長の隊員に諭されて、シルバは呻くように返事をした。
救護隊は向き直り、きびきびと走り去っていった。
呆然とするシルバの耳に、殴り合う音や荒々しい命令の声が届き始めた。我に返ると目の前で、ジュリアを襲った者だろうか、一人の黒服が仰向けで伸びていた。
シルバは視線を遠くに遣った。黄組のスタート地点に至る大通りでは、二人の黒服が背中合わせに立っていた。びしりとした上下の手刀の構えは、見事なまでに左右対称である。
二人の付近には、自警団を含めた八人がいた。ただそのうちの三人は倒れており、苦しげに身を捩っていた。
ゆっくりと回って、シルバは周りを確認した。一人、二人、三人、四人……。
至る所に黒服がおり、人々が取り囲んでいた。だが最初に見た戦場が最も手薄に感じられた。
意を決したシルバは走り出した。だがジュリアがやられた光景が脳裏に焼き付いており、思考に霧が掛かったような心境だった。
視線の先、二人の黒服は同時に動き、瞬く間に同数の自警団が地面に叩きつけられた。