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第9話 迷いのダンジョンの恐怖ピエロ

 アストリア一行は"喜の魂"の回収に成功し、次なる目的地、「アングリーボルケーノ」を目指し先を進んでいた。そこは"怒の魂"が実体化した"怒のイザベル"が支配している。


「この景色、さっきも見たような気がするんだが。」


 ローハンは不思議そうに言った。


 アストリアも異変を察知していた。


「確かに、何度も同じ空気の振動を繰り返しているようだ。」


「お前らは一生この森から出ることは出来ないのさ。ハハハハハッ!」


「フハハハハハハ!客人が来たぞ!」


 周囲を見渡すと、奇妙な姿のピエロ達が木々の陰から現れた。


 それぞれの顔は化け物のように歪み、その笑顔は狂気に満ちている。


 ピエロ達は宙返りをしながら、鋭い刃を仕込んだジャグリング用のボールやダガーを持ち、アストリア達を取り囲んでいる。


「フーッハハハハハッ!お前達が"喜の魂"を持ってることは知ってるぞ。それがあれば、俺達はもっとハイになれる!この森に入った者を生かして返すわけにはいかない。さあ、おとなしく渡してもらおうか!」


 アストリアは剣を抜き、ローハンは斧を構え、走り出す。


『セラフィス、状況を把握してくれ!』


 と心の中で叫ぶと、セラフィスが即座に応じ、アストリアに憑依した。


『スキャニングを開始する!』


 セラフィスの目が一瞬だけ蒼く輝き、彼の新たな力が発動する。


 周囲20メートル四方の敵の位置、地形、さらには敵が持つ武器の種類までが立体的な図としてアストリアの脳内に鮮明に描き出された。


 ピエロ達は10人、木々の陰や草むらに潜みながら少しずつ距離を詰めてきていることが分かる。


「奴らの配置は分かった!」


 アストリアは仲間達に指示を出した。


「ローハン、右前方の3体を頼む!俺は正面を抑える。セラフィス、次のスキャニングまでの15秒間、鋭気を養っていてくれ!」


 ローハンは笑って斧を掲げる。


「よし、俺に任せとけ!」


 アストリアは正面に現れた3体のピエロに向かって駆け出した。


 ピエロ達は同時にジャグリングボールを投げつけてきたが、アストリアはセラフィスから得た立体図面をもとに動きの予測を立て、全てを回避。


 咄嗟の反射神経で剣を振り、1体のピエロの刃を叩き落とす。


 一方、ローハンは右前方に潜んでいたピエロ達に向かって豪快に斧を振り下ろす。


 彼の斧は一撃で2体のピエロを吹き飛ばし、最後の1体に狙いを定めた。


 しかし、ピエロは素早い身のこなしで攻撃をかわしながら、毒を塗ったナイフを投げてくる。


 セラフィスの次のスキャニングが可能になるまでの15秒間が恐ろしく長く感じられた。



『あともう少しだ!それまで、何とか持ち堪えてくれ!』


 セラフィスが叫ぶ。


 アストリアは再び敵の攻撃をかわしながら時間を稼ぎ、ついに次のスキャニングが発動。


 周囲の状況が再び脳内に描き出される。

 残りのピエロ達は半円状に陣形を整え、囲い込みを狙っていることが分かった。


「ローハン、左後方から回り込む!俺は奴らの中心を突く!!」


 アストリアは一気に間合いを詰め、剣を振り下ろして中心にいたピエロの刃を弾き飛ばす。


 その瞬間、ローハンが後方から突進し、斧を渾身の力で振るって3体のピエロを一気に倒した。


 最後に残ったピエロ達は、一斉にアストリアに向かって攻撃を仕掛けてきた。


 アストリアは剣を構え、大地を踏みしめながら力をためる。


「これで終わりだ!マグナム・トニトルス(大いなる雷鳴)!!!!!」


 彼の剣から放たれた強烈な雷撃が、残ったピエロ達を一掃した。


 その衝撃で周囲の地面が裂け、ピエロ達は笑い声を残して消え去った。


 すると、今まで森林にいたはずのアストリア達はいつの間にか見晴らしのいい野原に立っていた。


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 戦いが終わり、アストリアは剣を納めた。


 ローハンが肩で息をしながら彼の背中を叩く。


「今回の敵も、結構骨が折れたな。」


 アストリアは静かに頷きながら、前を見つめた。


「ああ。だが、これからはもっと激しい戦いになるだろう。」


 一行は再び歩き出す。


 その背中には、確かな絆と新たな力の片鱗が光っていた。

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