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逆わらしべ
否垣ミヤコ
SF宇宙
2024年11月18日
公開日
968文字
完結
わらしべ長者の逆バージョン。地球に来た宇宙人が欲深い人間にたかられ続けるが、最後は——。

第1話

 地球のある村の真ん中に、突如宇宙人が降り立った。その宇宙人は人間の言葉を話せて、友好的で、そして手の内に大きな金塊を持っていた。

「もし、宇宙人さん。その手の中のものはなんですか。何か大事なものなのでしょうか」

 そう話しかけたのは、村一番の長者だった。長者はわざと価値に鈍感なふりをして、金塊を丸ごとせしめてやろうと目論んでいた。

「いえ、地球では、この金属があれば、何でも好きなものと交換してもらえると聞きまして」

「ははあ、なるほど。それなら、この馬はいかがでしょう? これに乗れば、歩かずに好きなところへ行けますよ。観光のお供にぜひどうぞ」

「わあ、動物に乗って移動するんですか? それは面白そうだなあ」

 宇宙人は長者の申し出をたいへん喜んで、金塊を馬と交換した。

 それを見ていた村人たちは、自分たちも長者の後に続くべく、虎視眈々と機会を伺うようになった。


 まず、門番の兵士が、

「宇宙人さん、宇宙人さん。その馬はすぐに疲れて使い物にならなくなりますよ。代わりに、この綺麗なドレスはどうでしょう?」

 と話を持ちかけた。

「わあ、人間はこれで体温調節するんですよね。面白いなあ」

 宇宙人はやはり喜び、馬を渡してドレスを着せてもらった。

 門番はそれ以上に喜んで、すぐさま馬を売っぱらって金貨を三枚手に入れた。


 次の日には、村の女が、

「あのう、そのドレス、綺麗だけれど暑いでしょう? よかったら、冷たいお蜜柑たべませんか?」

 と、井戸から出したばかりの蜜柑を差し出した。

 それに宇宙人が頷くや否や、気が変わる前にと急いでドレスを剥ぎ取り、質屋に持ち込んで金貨を一枚手に入れた。


 最後に村の子供たちが、

「蜜柑をくれたら、これをあげるよ」

 と言って、なんとただのわらしべ一本を宇宙人の手に握らせた。

「これは、何をするためのものなんだい?」

 宇宙人が聞くと、子供たちは被っていた帽子を脱いで答えた。

「このわらしべをたくさん集めて編むと、こういう帽子になるんだよ」

「へえ。これは軽くて、通気性もあっていいなあ」

「でしょう? もっと蜜柑を持ってきてくれたら、もっとあげるよ」

「ようし。それなら迎えの宇宙船に、交換するものをたくさん積んできてもらおう」

 宇宙人はさっそく仲間に連絡して、金塊を文字どおり山ほど持ってこさせた。

 すると、たちまち金の価値は大暴落し、金貨では何も買えなくなってしまった。

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